はぐれそうな天使

作・なかまくら

2008.3.16

とある星のとある国のとある町のとある病院の窓の外に。



「いいかい?仮に僕があの子を助けたとしよう」

真っ白なレインコートを着た天使がつつつっと降りてくる。

その後ろ、窓の中ではちいさな女の子がおおきな絵本を読んでいた。

「そんなことをしたら、天罰法7条『天使は生態系に大きな影響を及ぼしてはならない』に違反してしまうね」

緑色のレインコートに身を包んだ天使がくすりと笑いながらそう答えた。頭の上のわっかはハチマキでくるまれていた。

「その通り。彼女の命はやがて多くの命を必要とするだろう。それを贖うことは天使にだってできやしない。だから僕は仮に君があの子に干渉しようというならとめようと思う」

白い天使は羽を広げて威嚇して見せた。

「大丈夫、知ってるから。それに止める君を除けようとしたら天罰法67条『天使は天使を攻撃してはならない』に抵触してしまうかもしれない・・・だから・・・」

「そう、天罰法67条には追加条項がある」

「それも知ってる。『犯したものは天使としての存在を剥奪する』でしょ?・・・知ってるさ。だから、」

緑の天使はパタパタと羽を動かし、無表情に答えた。それを遮るように白い天使が言葉を発した。

「そうだよ。よく勉強したね。大天使検定2級、合格だ」

白い天使の笑顔は硬かった。

「だから何度も言ってるだろう?それはともかく、あの子はどうなるんだろうって」

女の子は定時の検査に来た看護婦さんに挨拶をして、大きな絵本を閉じた。









あとがき

勉強しても救えないかもしれない。でも、勉強しないよりはきっとまし。