おいしい宇宙戦艦の作り方

作・なかまくら

2008.2.9

窓のない部屋に

窓のない人々が座っていた。

ひとり、またひとりと席につき、その時を待っていた。



その時ではないこの時、一人の男が入ってきた。

それは予想外の出来事で、多くの目からうろこがぽたぽたと落ちた。

彼らはヒトの形をしてはいたが、俗に小人と呼ばれる大きさで、妖精と呼ばれる力を持っていた。



「あい。ではただいまから第736回、定期報告を始めましゅ」

「おねがいしましゅ♪」「おねがいしましゅ!」「おねがいしましゅ?」

ぐるりと円を描いたテーブルのあちらこちらから声が聞こえた。



「ではまず防衛大臣、現在状況報告をお願いしましゅ」

「あい」

防衛大臣と呼ばれた男が、席を立ち、スクリーンに向かう。

「これが現在の我があまったれい国の確保されている領土です」

「なんだ!」「なんだなんだ!」「なんなんだ!」

批判が相次いだ。

耳をふさいでいた防衛大臣が、静かになったのを見て、説明を再開した。

「今回、わが国は敵の最新兵器のPVを手に入れました。それがこれです」

じゃじゃーん♪

派手な音楽で始まったそれのなかでは、巨大な人型のロボットを指環ひとつで意のままに操っていた。

次にあまったれい国の都市の風景が現れ、人型ロボットにあっけなく食べられるシーンが流れた。

「くしょったれのからっと王国め!」

誰かが叫び、誰かがむせび泣いていた。



「しぇいしゅくに! まずはわが国の現状をもっとしぇいかくに知りたい」

そう言って、大統領は皆を見回した。

「まず、A社。例の装甲の開発はどうなっている」

びくり、とA社の重役が跳ね上がった。

「例の…というのはウエハース装甲のことでしょうか?」

B社の重役が口を挟む。

「あれを使ったわが社の陸戦型戦車の戦闘記録に、敵の6カラット砲で装甲の表面がぼろぼろと崩れ落ちたという報告があります!」

その言葉を聞いて、A社の重役が泣き崩れた。うわーん。

「あい、しぇいしゅくに!」

泣き止んだ。



「ウエハース装甲は我々が開発したものだから、技術不足ということだ。引き続き開発をお願いする。B社の製品は、基本発掘しゃれたものだろう?その仕組みの解明に当たるのだ!」

A社、B社の重役がともに席についた。

「しゃて、ここからが今日の本題だ」

その言葉を合図に、男はようやく動き出す。ゆったりとした足取りで歩を進め、やがて大統領のとなりにたどり着いた。

「我々は敵のロボットをヨクボーンと名づけた」

「ずっこけー……そうじゃないでしょう、ちゃんと紹介してくださいよ」

「私、ずっこけーって言って、人をはじめてみました」

その言葉に男が赤くなる。

「些事はいいです。本題を」

(文字数もやばいんですから…)

こっそりそんなことを付け加えていた。

「あい。彼は……プラ=モデラートしゃんです。親愛なるわが国の国民からの提案で、宇宙戦艦を作ることが決定した。しょこで、彼の協力を仰いだのでしゅ」

「どうぞよろしく」

モデラートと呼ばれた男はどこか垢抜けていて、かっこいい男のオーラ少しがあった。

「うちゅうしぇんかん!」「宇宙行くのか?」「しぇんかんじゃないとだめなのですか?」

いろいろな意見が飛び、

「よし、宇宙戦艦を作ろう!ということで決定!」

すべてスルーされた。



「では早速、船底だが、」

「あい! 我がC社に是非やらせてください。わが社のしぇんべいの湿気を吸収しない技術の粋をご覧に入れて見せましゅ!」

「よろしい」

モデラートが呟き設計図に書き込んだ。

では次、では次、

ベッドは?マシュマロ

操舵輪は?ドーナツで

窓ガラスは?べっこうあめとか?



「主砲は?」

その言葉に、手がいっせいに上がった。

「わがD社のノッポが」「いえわがE社のラピッツが…」「いえいえわがF社のプッポが!」

「しぇいしゅくに!」

大統領が叫んだ。

「企業同士で仲たがいしているばやいではないのだ。そんなことをしていれば、我々はあっという間にやられてしまう……手を取り合い、国を守ってくれ」

「ビタミン……なんてどうでしょう?」

「なにがでしゅ?」

モデラートの提案に首をかしげた。彼は戸惑いながらも、言葉を続けた。

「新しい、主砲の製品名です」

「おお!」「すばらし!」「おお・・・おりゃー」

賛成の拍手が起き、気合が起きた。

こうして拍手のうちに、会議は終わった。



誰もいなくなったのを見計らって、

モデラートは、スーツを脱いで扉をくぐった。

「やれやれ、これで準備は万全だ」

彼は、街に出掛けて、喫茶店に入るとパソコンをつけて業務報告を付け始めた。





それからしばらくして完成した宇宙戦艦は、からっと王国の25カラットミサイルに迎撃され、大富豪に食べられてしまったそうな。



ただ、その年はやけに寄付金が多く、多くのお菓子が子ども達に配られたそうな。





あとがき



お菓子の国のおかしな話でした。
おかしな宇宙戦艦は美味しいのでしょうか?
もうすぐバレンタインなのにチョコレート(板チョコ)を入れるのを忘れていました。でも、きっと大気圏突入には耐えられないです(笑)
そんなところで失礼します。