たったひとつの嘘
「黙っててもなんにもならないんだよ」
割れた窓ガラス。転がるボール。
松本君が先生に怒られてる。階段の陰から僕はそれをじっと見てた。
実は僕は随分前からそこで見ていて、本当の犯人を知っている。
松本君はいじめっこ。僕はいじめられっこ。僕は黙ってる。いつも黙ってる。
だから今日も黙ってる。
そんな僕をいつも助けてくれるのは中川君。中川君は僕のヒーロー。
階段の上から中川君はやってくる。
黙っててくれてありがとう。
中川君は、僕のヒーロー。