星掬いのトートロジー
キャスト
鈴木 小太郎・・・・・・・・・ようき・人見知り
佐久間 信明・・・・・・・・・れいせい・メルヘン
山梨 花・・・・・・・・・・・うっかり
芹沢 達昭・・・・・・・・・・まじめ・計画的
御手洗(みたらし) 絵奈・・・・ゆうかん・社会科学文化学科
白雪りんご・・・・・・・・・・おとなしい・物言い
【アバン】
鈴木 春はあけぼの。ようよう白くなり行く山際、少し明かりて。
佐久間 紫立ちたる雲の細くたなびきたる。
･･･朝だね。
山梨 ふぁあ･･･おはようございます。
鈴木 おはよう。
＞佐久間 春はあけぼの･･･。
山梨 ふぁい？
佐久間 いや･･･、いいフレーズだなって思って。
鈴木 そうか。･･････そうだな。そうだ。うん。･･･そうだ。
山梨 ･････････････････････いい景色ですね。
鈴木 うん、そうだ。･･･うん。
山梨 ･･････そろそろ帰りましょうか。
鈴木 うん。そうだ。･･･うん。
＠暗転。
佐久間 春はあけぼの。
【春】
＠明転。
場所は、天文サークル「ステラシアタ」の部室。
畳にちゃぶ台って、憧れた時代が私にもありました。
その一方で、なんか凄い望遠鏡とか。寝袋とか。
鈴木、寝ている。くかー。
山梨 ･･･あれ？ 空いてる。･･･おはようございまー･･･すっ･･･と。ふぁああ･･･、ふう。ちょっと掃除しなくちゃですね。カップラーメンとか、食べたら片付けてくださいよね、まったく･･････あれ、入ってる？ ふぇ？ちょ･･･めっさ伸びてるし。なにこれ。え？･･･あ。
山梨、鈴木を見つける。
山梨 あら？あら、あらら？？･･････鈴木さんの･･･寝顔ちぇー･･･っく！！ みなさんこんにちは。本日は、ここ、サークル棟から、お送りしていまーす。いやー、なかなかに可愛い寝顔ですね。
ぱしゃっと、携帯のカメラで撮る（リアル音、希望）。
しばらくそれを見つめて、にやにやする。
山梨 第百二十七番目の山梨花の家宝に決定！ おめでとう！ 胴上げだい！
くるくる回っていると、鈴木が目を覚ましている。
山梨、それに気付いて、ぴたっと止まる。
それから、スカートの裾を押さえてみる。
山梨 ･･････見られました？
鈴木 ううん、何が？
山梨 本当は？
鈴木 正直に答えたほうがいい？
山梨 はい。
鈴木 真実は時に人を傷つけるものだよ。だから･･････
山梨 ･･････（スゴイ顔）
鈴木 はい。ごめんなさい。二度としません。
山梨 ･････それだけですか。
鈴木 いや、ホントにごめん。申し訳、ございませんでした。
山梨 あ、もういいです。そこまでなら。
鈴木 そこまで？
山梨 あ、私、お昼ご飯買ってきますね。鈴木さん、何か買ってきます？
鈴木 ああ、いいよ。･･･って、お昼？！
佐久間 おつかれーっす。
＞山梨 あ、お疲れ様です。
佐久間 お疲れ。･･･入れ違いか。
山梨 お昼買ったら、すぐ戻ってきます。
佐久間 そう。生協、混み始めてたから、早めに行った方がいいかも。
山梨 え、もう･･･！？
佐久間 まあ、一回目の授業はガイダンスだから。
鈴木 わざわざ一回目から行かなくてもいいのに･･･。
山梨 まったくです。
佐久間 お前は行くべきだ。専門だろ？
鈴木 大丈夫。俺、頭はいいほうだから。
佐久間 だからだらしない人間になるとは思わない。
鈴木 全然。
山梨 あ、私、行きますね。
佐久間 あ、行ってらっしゃい。
鈴木 あれ？ ３分経ってる？
佐久間 ･････････
鈴木 ･･･なんじゃこりゃあ！！
佐久間 ･･･どうした？
佐久間 飛び級だから？
鈴木 そう。赤いきつね。って、そうじゃなくて。中身。
佐久間 普通じゃん。そういうもんじゃないの？
鈴木 分かってない。君はカップ麺というものを分かっていない。いいか、カップ麺というのはそもそも、１９７１年に･･･
佐久間 うんうん。
鈴木 ･･･つれない。
佐久間 うんうん。そういう間柄だろう？
鈴木 否定はしないけど。･･･それにしても、この伸びっぷりはヤバイ。
佐久間 どっちから食べようかな･･･。
鈴木 どうしようかな。とりあえず、これ、入れてみるか
（と言って、粉末スープを入れてみる）。
佐久間 話し変わるけどさ。
鈴木 うん。
佐久間 そっちはもうゼミとか決まってるの？
鈴木 んー、まだ。じゃない？
佐久間 そうか･･･。うちさ、今セメ中に希望届出せってさ。
鈴木 ふーん。まあ、氷河期だからねぇ。
芹沢 お疲れ。
鈴木 お、誰かと思えば。天才。
佐久間 や。
芹沢 この前はすまん。どうしても抜けられなくて。
佐久間 しゃーないしゃーない。
鈴木 そういや、久しぶりに会った？
芹沢 そうかも。ここ最近ずっと研究室にいるから。
鈴木 ･･･おー、順調？
芹沢 まあ、追いつかんな。
佐久間 飛び級だから？
芹沢 それもある。でも、それ以上に知らないことが多すぎる。
佐久間 なんかかっこいい。「知らないことが多すぎる」うん！
芹沢 まあ、自分で飛び込んだ世界だからな。なんとかするさ。
鈴木 そうか？
芹沢 それより。缶切知らない？
佐久間 ん？
鈴木 缶切り？
芹沢 そう。持ち手の部分に星座が彫ってあるんだけど･･･。
佐久間 それを探しに来たわけ。
芹沢 そう。知らんかな？
鈴木 んー･･･なんというか、この有様だから。
佐久間 ここでなくした？
芹沢 うん。
佐久間 じゃあ、どっかにあると思うけど。
鈴木 大事なもの？
芹沢 ああ･･･まあ。
佐久間 あ、あれだ。去年の暮れに缶詰パーティした時。
芹沢 そうそう。その時、缶切り忘れてて、それで一番下宿が近いからって俺が持ってきたんだけど･･･。
鈴木 ああ！
芹沢 その後行方不明で。
佐久間 なんでまた今更。
鈴木 佐久間君。わからないのかね？
佐久間 え？
鈴木 芹沢家ではなぁ･･･桃の缶詰が彼の帰りを待ってるんだよぉ！
芹沢 さばの缶詰だが。
鈴木 あの時の幹事、誰だっけ？
芹沢 村谷さんだよ。
鈴木 何故にあの人？
佐久間 連絡はしてみた？
芹沢 一応。例によって音信普通。それに片づけしたの、半分以上俺らだし？ この部屋のどこかにあると思うんだけど。
鈴木 手伝おうか？
佐久間 んー、芹沢くん。ここも宇宙のようにエントロピーが増大し続ける世界の一部。そんな簡単には分からないのだよ。
芹沢 うん。とりあえず片付けようか。ちょっと想像を超えたレベルで汚ないぞ。うん。これはまずいって。新入生とか、誰か見学来たか？
佐久間 新入生？
鈴木 そうか。そんな時期だっけ。
芹沢 「そんな時期だっけ･･･」って、そんな時期だよ。
佐久間 ･･･そういえば。（去年のチラシを見つけて）
芹沢 おいおい。
佐久間 やっぱり･･･
芹沢 ん？
佐久間 「ステラシアタ」って、いい名前だよね。
鈴木 うまっ！！
佐久間 え？
鈴木 ヤバイ。これ、うまいって。佐久間、お前食ってみ。
佐久間 え･･･絶対うまくないって。
芹沢 どうした？
鈴木 騙されたと思って食ってみろって。
芹沢 赤いきつね。
佐久間 そう。でも、時間たち過ぎで伸びたい放題で。
鈴木 それがうまいんだって。なんだろう、この新食感。ぐっふっふ･･･うまかろう？ ･･･って主張しすぎない歯ごたえがイイ！
芹沢 どれどれ？
鈴木 お、食べてみる？
佐久間 やめたほうがいいって！ ･･･って、何してんの？
芹沢 いや、マイ箸が･･･確かこの辺に･･･ない。
鈴木 いいじゃん！箸ぐらい貸してやるから。ほら
芹沢 いや。それは。無理だ。
佐久間 でた。潔癖症。
芹沢 衛生面に常に気をつけいている男と呼んでくれ。
佐久間 でた。衛生面に常に気をつけている男。
鈴木 うをう。
芹沢 からかうな。俺、ちょっと割り箸もらってくる。
佐久間 そこまでしなくても。
芹沢 自分の弁当も食えないしな。じゃあ。
佐久間 いってらっしゃい。
鈴木 麺伸びるから早めで。ずるずる。
佐久間 さてさて。･･･芹沢じゃないけど、ここ、･･･いい加減片付けないとまずいかな。
鈴木 そうか？（ずるずる）
佐久間 代表、頼みます。
鈴木 代表命令です。頼みます。
佐久間 そうきたか。
鈴木 そうくるさ。
佐久間 んー･･･あの辺、いつのだっけ？
鈴木 あれ？ あれは、去年の冬合宿のダンボールだな。
佐久間 ちょっと崩してみる？
鈴木 えー･･･（ずるずる）、
＋＋
部室の外。すなわち廊下。
ちょっと古い校舎みたいな感じがいいなぁ。
青春の一ページって感じがするじゃないですか。えへへ。
新入生の心は揺れ動くのですよ （✛ι✛）д
御手洗 ここが天文部かあ！ ふーん、「ステラシアタ」って名前なのね！ なかなか素敵な名前じゃないの！
白雪 ちょ、ちょっと･･･御手洗さん、そんなに大きな声出したら、中の人に聞こえちゃいますよ。
御手洗 何言ってるの、聞こえるように言ってるんだから、問題ないじゃない。じゃない？
白雪 じゃないって･･･言われましても。
御手洗 やっぱり、こういうのって、第一印象が大事だと思うの、私。
白雪 はぁ。
御手洗 「こんにちは。天文部、入りたいんですけど･･･」なんて、そんなんじゃダメだわ。ろくな大学生活（キャンパスライフ）が待ってるとは到底思えない！ そう、ファーストインパクトを、なんか考えないと･･･菓子折りでも持って来ればよかったかなぁ。
白雪 ･･･あ、それなら、私持ってますよ。
御手洗 準備がいいな！ なんで？
白雪 え？！ あ、ああ。母が持たせてくれたんです。皆さんに持ってけって。
御手洗 東京バナナ？
白雪 ああ。兄が東京の大学にいってるので。
御手洗 ほうほう。東京の、大学にね。
白雪 そうです。東京の、大学に。
御手洗 あれ？ 母？
白雪 ああ。私、自宅生なんですよ。
御手洗 へえ。じゃあさ、オススメスポットとか、詳しいんだ。
白雪 うーん･･･まあ、片田舎ですし･･･。ふつうにカラオケとか？
御手洗 んー･･･ぬ？
白雪 あ、嘉良山遺跡がありますよ。電車で二十分くらい行くと。
御手洗 んー･･･そうか。そうなんだ。
間。
御手洗 あ、お弁当なんだ。
白雪 え？
御手洗 いや、自宅生だからさ。タコウインナーとか
白雪 たこういんなー？？
御手洗 え、知らないの？ほら、ウインナーに切り込みいれて。
白雪 ああ、タコさんウインナーですね。
御手洗 そうそう、タコウインナー
白雪 タコさん、ウインナーですね。
御手洗 タコさん･･･ウインナー。
白雪 ええ。もちろんです。
御手洗 そっかあ･･･。おいしいもんね。タコさんウインナー。
白雪 そうです。
御手洗 あれ、なんの話だっけ？
白雪 さて。
御手洗 ･･･じゃあ、入ろっか？
白雪 はい。
と、そこに山梨ちゃんが帰ってきちゃったりする。
山梨 あ、あぁーーーーーーーーー！！
白雪 ･････････（つんつん）
御手洗 ･･････え、私。
白雪 ･･･うん。
山梨 こんにちは新入生ですよねよかったらどうぞ。（･･･と言って部屋を開けて）ごめんなさいちょっとストップストップですよ！
白雪 ええと、落ち着いてください！ 句読点忘れないでください！
御手洗 ああ！ 深呼吸ですよ。ひっひっふー、ひっひっふー。
白雪 御手洗さん、それラマーズ法。
山梨 へえ、御手洗さんっていうの。おいしそうな名前だね！
白雪 え。
御手洗 あ、あの！ 私、流れ星の精霊です！
白雪 え。
山梨 そうなの！
御手洗 そうなんです。それで、これ、私の故郷の星のほうのお土産です。
山梨 そうなの！ 東京バナナって書いてあるけど。
御手洗 日本語に直すと東京バナナって読めるんですけど、本当の発音は･･･
白雪 あ、ええと、菓子折りです。
御手洗 とにかく良かったら食べてください！
山梨 任せて！
御手洗 任せられました！
白雪 ちょっと･･･おちついてくださーい！
御手洗 ･･･はい。
山梨 ･･･はい。
山梨 うん。まあ、ちょっと散らかってるけど、入って入って。
と、山梨、ふたりを中へ導きいれる。
中では、ダンボールが散乱。
鈴木は、赤いきつねを食し、
佐久間は、ダンボールに埋もれていた
ぶら下がり健康器にぶら下がっている。
間。
佐久間 あ、･･･おかえり。
山梨 あ、お疲れ様です。ええと･･･。ええと･･･。新入生ですっ。
白雪 あ、白雪です。
御手洗 みたら･･･
山梨 流れ星の精霊さんです。
佐久間 お。
御手洗 あ、すいません、違います。
山梨 あ、そうなの。
御手洗 私のファーストインパクトが･･･。
佐久間 ファーストインパクト？
白雪 あの･･･御手洗さん。たぶんファーストインプレッションですよ？ 第一印象ですから。
御手洗 え、ファーストインパクト。
白雪 ファーストインプレッション。
佐久間 ファーストインパクト。
鈴木 ファーストインプレッション。
佐久間 ファーストインパクト？
山梨 いや、ファーストインプレッションだと思います。
佐久間 そうかー。
山梨 で。
鈴木 まるで先ほどまで泥棒が入っていなかったかのような綺麗なこの状況。
山梨 いや、汚いですけど。
佐久間 入ってたの？
鈴木 んーん。
山梨 先輩。･･･どうしてぶらさがってるんですか？
佐久間 やっと聞いてくれたか。
山梨 はい。
佐久間 （降りて）なんか、ダンボールをどけたら出てきたんだ。
山梨 ぶら下がり健康器。
佐久間 うん。
鈴木 で。
佐久間 ぶら下がってたのです。
芹沢、入ってくる。良かった、君の存在が必要だ。
芹沢 ･･････。
御手洗 あ、･･･おはようございます。
山梨 あ、お疲れ様です。
芹沢 新入生？
鈴木 よ。
佐久間 ･･･そう。
芹沢 ようこそ。天文サークル、ステラシアタです。
御手洗 あ、はい。こんにちは。御手洗です。
芹沢 芹沢です。
佐久間 佐久間です。
鈴木 鈴木です。
芹沢 ･･･ええと、一言いいか？
鈴木 何？
芹沢 きたなっ！
鈴木 え？
芹沢 大事なことだから、もう一度言うぞ。･･･きたなっ！
佐久間 そうかー。
鈴木 うん。
芹沢 何があった。
鈴木 いや、片付けようとして。
芹沢 そうかー。
鈴木 うん。
芹沢 で。
山梨 え？
芹沢 見学？
御手洗 え、あ、はい。
芹沢 ええと、自己紹介！
山梨 あ、ええと。山梨です。２年です。よろしく。
鈴木 ･･･。
御手洗 あ、御手洗です。よろしくお願いします。
白雪 白雪です。
佐久間 佐久間です、３年です。よろしく。
鈴木 鈴木です。一応代表やってます。
御手洗 あ、はい。よろしくお願いします。
白雪 よろしくお願いします。
芹沢 代表、しっかりしろって。
鈴木 あ、うん。
山梨 そうなんですよ。なんかさっきから笑顔がぎこちな･･･あれ？ もしかして照れてるんですか･･･。
鈴木 まあ。
芹沢 あれ？ だって、山梨が入ってきた時も凄かった気がするけど。
鈴木 まあ。
佐久間 まあ、まあ。
山梨 佐久間先輩も？
鈴木 まあ、まあ。
＞佐久間 まあ、まあ、まあ。
鈴木 ･･･天文サークル「ステラシアタ」にようこそ！
御手洗 え？ あ、はい。
鈴木 ･･･ごほん。
芹沢 まあ･･･えっと、「ステラシアタ」こんな感じのサークルだよ。いろんなとこに星を観にいったり、みんなで集まって騒いだりとかする感じかな。パス。
山梨 え、あ、えと･･･先輩後輩の仲はすごくいいですよ！ あと、来たい時に来ればいいから。
白雪 あ、ひとつ聞いてもいいですか？
山梨 なにかな？
白雪 お金とかってやっぱり結構かかります？
山梨 そんなことないよ。交通費くらい。
芹沢 まあ、寝袋とかあったほうがいいから最初ちょっとかかるかもだけど。あ、こいつみたいに写真マニアになると結構かかる。
佐久間 写真マニアって･･･
山梨 あれいくらでしたっけ？
佐久間 25万。
御手洗 にじゅうごま･･･
芹沢 大丈夫。こいつが趣味で撮ってるだけだから。
鈴木 あとは、電車代とか。
芹沢 お、しゃべった。
鈴木 ちょっと慣れた。
芹沢 それは何より。パス。
鈴木 うん。後は、望遠鏡貯金。
白雪 貯金。
鈴木 うん。天体望遠鏡は高いからね。飲み会するたびにちょっとずつ多めに払って、貯金してて･･･。
芹沢 まあ、飲み会参加しなかったら全然払わなくていいから。
山梨 来たい時に来ればいいから、自由な感じだよ！
佐久間 ･･･うん。そろそろ座ろうよ。
芹沢 あ、今何時だ？
白雪 ええっと、
芹沢 ぬぅ･･･半までに戻るって言ってきたんだった。
鈴木 お、頑張れ。
山梨 ･･･お疲れ様です。
芹沢 それじゃ、俺行くわ。お疲れ様でーす。
佐久間 お疲れー。
鈴木 んー。
山梨 お疲れ様でーす。
佐久間 あ、そういえば、この前のやつ、写真の現像できたよ。
鈴木 お、ホント？
山梨 あ、見たいです。
佐久間 うん。あ、見る？
御手洗 ･･･あ、はいっ！
白雪 はい。
＠暗転。
【春２】
＠明転。芹沢以外が集まっている。わいわいしている。
鈴木 佐久間―、そういえば、芹沢は？？？
佐久間 研究室。
御手洗 芹沢先輩って、忙しい方なんですね～。
佐久間 ああ、あいつは飛び級だからね。卒論の準備で忙しいんだろう。遅れてはくるみたいだけど？ ２次会とかあるのか？
鈴木 ２次会はねぇ！
佐久間 よーし、つごうか。
鈴木 ･････････えほん。
＞佐久間 オレンジジュースいる人？
白雪 あ、はい。
佐久間 はーい、どうぞ。
鈴木 ･･･えほん。
＞佐久間 御手洗さんはどうする？
御手洗 あ、私は･･･スクリュードライバーとか戴いてもいいですか？？
佐久間 スクリュ･･･
山梨 おおっ！ 御手洗ちゃん、いけるくちなのね！ 先輩に任しとき！
御手洗 え、いや、別にそんな呑めるわけでもないんですけど･･･ああっ、入れすぎです。
佐久間 任しとき！って･･･どこの方言？
白雪 熱海あたりじゃないですか？
佐久間 熱海弁？
鈴木 ･･････えほん。
佐久間 みんな入った？
山梨 オッケーです。
白雪 はい。
御手洗 大丈夫です。
鈴木 ･･･えほん。
佐久間 じゃあ、代表に音頭をとってもらおうかな？
鈴木 ･･････えほん。えほんえほんえほん。
佐久間 ん、どうした？
鈴木 カルピスサワーをください。
佐久間 最初からそういえばいいのに。
鈴木 だって、なんか、ちょっとやってみたかったんだって。
佐久間 よしよし。
鈴木 ･･･馬鹿にされた気分。
佐久間 そうだな。
山梨 あ、佐久間先輩、鈴木先輩には私が。
佐久間 いいよいいよ。
山梨 私が。
鈴木 う、うん、じゃあ、せっかくだから、山梨さんからもらおうかな。
佐久間 そうか、じゃあ、そうするといい。
佐久間 ･･･じゃあ、気を取り直して！ 代表！
鈴木 おし。新入生も入ってきたことだし、バンバン星観るぞ！
佐久間 おっ！
山梨 おおっ！
鈴木 かん、ぱーい！
乾杯な動き。
鈴木 ･･･うむっうむっ･･･ぷはー！！ やっぱ、カルピスサワーだね！
山梨 ちょっと、先輩飲むの早いんじゃないですか！（乾杯し損ねる）
鈴木 そう？ 普通じゃない？
白雪 あの･･･今更ですけど、ここで飲んで大丈夫なんですか？
御手洗 あ。
鈴木 え？ 大丈夫大丈夫。ね、山梨さん。
山梨 え、あ、はい。
白雪 いや、なんか、一応、未成年ですから。
鈴木 白雪ちゃんはオレンジジュースでしょ？
白雪 そうなんですけど･･･この人が。
御手洗 あ、私。
佐久間 んー･･･。ちょっと耳を澄ませてごらん。
白雪 え？
静かになると、わいわいという音が他の部室からも聞こえている。
佐久間 つまり、そういうこと。
鈴木 この建物全部のサークルが多分今日やってるんじゃないかな？
御手洗 無礼講ってヤツですか。
鈴木 まあ、そんな感じ？
御手洗 無礼講！ いい響きですね。よし。次は、カルーアミルク行きます。
山梨 お、強いの行くね！ 気をつけてー、一気、一気！
白雪 伝統が後輩を殺した･･･って、ポスターありましたよね。
佐久間 え、ああ･･･。
白雪 私、私の人生大切にしたいなって、思います。
御手洗 白雪ぃ！
山梨 白雪ぃ！
白雪 え、ええと･･･はい？
御手洗 白雪りんご。
山梨 白雪りんご。
白雪 ･･･はい。
御手洗 飲め。
白雪 いや、
山梨 取り押さえろ！
御手洗 はっ！
白雪 え、ちょ･･･御手洗さんっ！
山梨 うっふっふ･･･あーっはっはっはー
鈴木 山梨って笑い上戸なんだな。
佐久間 そして彼女は変貌した。
鈴木 おそろしい。
佐久間 まったくだ。
白雪 浸ってないで助けてください！
山梨 さぁ･･･さあさあさあ！
御手洗 飲んでしまえ。飲んだら楽になるぞ･･･
山梨 うっふっふ･･･
御手洗 ぐっふっふ･･･
白雪 い、いやー―
芹沢登場。山梨の手から、コップを奪い取って、飲み干す。
芹沢 ･･･何事だと思うぞ。
山梨 あ･･･先輩･･･すみません。
鈴木 真打ち登場。
芹沢 鈴木。お前も止めろよ。
鈴木 申し訳ない。
白雪 ･･･ぐすん
芹沢 大丈夫か？
白雪 ･･････すみません、私、下戸なんです。
芹沢 大丈夫だ。無理に飲む必要なんてない。俺も下戸だ。
鈴木 ゲコが飲んだゲコ。
佐久間 ゲコゲコ。
白雪 先輩･･･
芹沢 大丈夫。ちょっとこいつら、舞い上がっちゃってるだけだから。嬉しいんだよ。新入生が入ってきてさ。
白雪 その･･･はい。ありがとうございます。
鈴木 なんだか、いい雰囲気？
佐久間 いや、悪い雰囲気。
芹沢 お前達は正座！
正座。
芹沢 よし、謝る！
謝る。
芹沢 よし！ これで許してくれるか？
白雪 あ･･･はい。その･･･私のほうこそ、すみませんでした。
芹沢 うん。これで万事解決だ！
鈴木 ん？ 芹沢、大丈夫か？
芹沢 ん、なにがだ？（妙に声が大きい）
佐久間 そういえば、さっき飲んだの何？
山梨 ･･･カルーアミルクです。
鈴木 あ、じゃあ、こいつだめだ。
佐久間 こいつ一番酒弱いんだから！
山梨 そうなんですか！？
芹沢 そうなんです！うぅっ･･･
白雪 芹沢先輩！
芹沢 大丈夫･･･大丈夫だから。
山梨 まるでドラマのいちシーンみたいですねー。
御手洗 芹沢先輩･･･
山梨 大丈夫･･･大丈夫だから。実は俺･･･ずっと前から･･･
白雪 もう、からかわないでください！
山梨 ･･･すんません。
芹沢 酔ってなんかナイゾ！
鈴木 酔ってるやつはみんなそう言うんだよ！
芹沢 みんな楽しくていいな！ ･･･俺、何で今年卒業なんだよー･･･
佐久間 飛び級したからだろ！
鈴木 俺と一緒に留年するかっ！？
芹沢 あー･･･いいねぇ。いい夢だ。
佐久間 一緒に留年したら、一緒に卒業できないだろ！
鈴木 確かに？
佐久間 あ、そういえば、演劇サークルの方は最近どうなってるのよ？
山梨 え？
御手洗 え？
鈴木 山梨さんは、掛け持ちしてんの。
御手洗 そうなんですかー
山梨 そうなんです。
鈴木 あ、じゃあ、なんかやってよ。
山梨 へ？
鈴木 なんだっけ？ 前に出たの。
山梨 えー･･･そういうフリ止めてくれます？
鈴木 そうなの？
山梨 悪手です。
鈴木 握手？
山梨 囲碁ですよ
御手洗 囲碁もできるんですかー？
佐久間 今日やってないの？
山梨 たぶん･･･やってます。
鈴木 行かないの？
山梨 ･･･なんというか、アウェーなんですよ。
佐久間 それは普段行かないから･･･
山梨 それもあるんですけどー、なんというか、近寄りがたい人々って感じです。
鈴木 そうかー･･･
佐久間 ここもキャラ濃いと思うんだけどな。
鈴木 あれ？ 芹沢、寝ちゃった？
白雪 ･･･はい。
御手洗 せんぱーい･･･アドレス交換しましょうよ。
山梨 うわっ、御手洗ちゃん、酔ってる？
御手洗 先輩は酔ってないんですかぁ？
山梨 もう、醒めちゃったよ。
芹沢 すまーん
御手洗 すみませーん
山梨 いいですって。
佐久間 え、寝言じゃないの？
山梨 え、そうなんですか？
鈴木 肉って書くか？
山梨 ･･･ご随意に。
御手洗 やっちゃってくださいー
鈴木 おっしゃー。うぉおおー
御手洗 うぉおおー
山梨 ちょっと、飲みすぎじゃないの？
御手洗 酔ってないですよ。
山梨 酔ってるって！
白雪 佐久間先輩知ってますか？ 乾杯の本当の意味を。
佐久間 本当の意味？
白雪 そう、本当の意味です。それは、中世ヨーロッパで始まったといわれているんですが、･･････ときの支配者、バルディッシュ・Ａ・シュタンツベルグは･･･
佐久間 バルディ･･･？？
白雪 バルディッシュ・Ａ・シュタンツベルグです！
山梨 ありゃ？ 白雪ちゃん、そのテンションで行くわけ？
白雪 え？
山梨 なんかテンションおかしくない？
白雪 おかしくないですよ～
鈴木 あれだ！ ふいんきに飲まれてだな。
佐久間 おまえ、ろれつが回ってないぞ。
御手洗 あ、ローレンツさんからメールだ。
山梨 え？
御手洗 そんな友達いないけど～ウケるー
鈴木 ウケルー
白雪 そう、まさに、その時、敵の密偵は、公然とこう叫んだのです。乾杯！と。それは、毒をもった杯でさえ、呑まなければならない誓いの言葉なのです。
御手洗 ウケルぅー
鈴木 ウケナーイ
御手洗 ウケないのかよっ！
山梨 ちょっと、みんな早すぎですっ！！
佐久間 まったくだ。
山梨 あ、佐久間さん。帰ってきたんですね、理性の世界に。
佐久間 みんな、弱いの分かってんなら、ゆっくり飲めばいいのに。
山梨 佐久間さん･･･
佐久間 なに？
山梨 さようなら！（一気飲み）
佐久間 ああっ！ ちょ･･･
山梨 せんぱ～い。ちょっと聞いてくださいよ～
鈴木 え、ちょ、どうしたんだ！ 佐久間！ 山梨が見境なくなってるんだが･･･
佐久間 いや、実に理性的だと思うぞ。
鈴木 どこのへんがっ！？
山梨 何で逃げるんですかぁ！ 顔真っ赤ですよ～
佐久間 おそるべし。
白雪 ･･･なんか、酒池肉林ですね。
佐久間 あ、どうも。
白雪 どうも。
御手洗 白雪～今度こそ、逃がさないんだからねっ！
白雪 ちょっと･･･御手洗さん！ あ、力ない。
佐久間 白雪さん。
白雪 あ、はい？
佐久間 ･･･さようならっ！
白雪 ああっ！ ･･･どうしたらいいんですか。
鈴木 ･･･歌えばいいと思うよ。さよなら～さよなら～♪（「さよなら」オフコース）
＞山梨 さよなら～さよなら～♪
白雪 もうっ！ 酔っ払ってる人って無責任ですね！
＠暗転
もうすぐ外は白い冬。
愛したのは確かに君だけ。そのままの君だけ。（オフコース「さよなら」より）
【夏】
＠明転
佐久間 そっちはどう？
山梨 えーと、もうちょっとですー。
佐久間 あ、寝袋そん中に入ってる？
御手洗 え、あ、入ってます。
山梨 今回は、野宿じゃないんですよね！
佐久間 そうだよ。
御手洗 先輩嬉しそうですね！
山梨 そうだよー。恐ろしいんだよ、野宿は！
佐久間 テント張ってるじゃん。
山梨 あ！ ピンクのテントとも決別ですね！
御手洗 ピンクの。
佐久間 そうだねー
御手洗 よかったー･･･
佐久間 意外だね。ピンク嫌い？
御手洗 女の子だからって、ピンク好きとは限らないです。
佐久間 俺はわりと好きだけど？
山梨 へぇええっ！
佐久間 ･･･男の子だからって、ピンク嫌いとは限らないよ。それより、準備は？
山梨 あ、はい。後はこれを入れたら･･･あ、オッケーです。
佐久間 よし、行こうか。
山梨 はいっ！
＞御手洗 はいっ！
一旦はけて、別のところから出てくる。
佐久間 荷物大丈夫？
山梨 あ、大丈夫でーす。
佐久間 御手洗さんは。
御手洗 あ、私も大丈夫です。
佐久間 そうか･･･俺はもう、ダメだ。
山梨 へ？ 頑張ってくださいよ！
佐久間 無理っす。
御手洗 駅までもうちょっとです！ 頑張ってください！
佐久間 ･･･はーい。
山梨 むー。
はけて出て。音、頑張れ。
電車に乗っている。新幹線かもしれない。
がたんごとん。
御手洗 そういえば、今日、他の方は･･･？
山梨 ああ。芹沢さんと白雪ちゃんは学部の新歓なんだって。鈴木さんは･･･駅で待ち合わせの予定じゃ･･･？
佐久間 集中講義･･･が長引いてんのかな？ メールしてみよ。
御手洗 集中講義ってなんです？
山梨 あ、そうか。一年生はまだ受けたことないか。集中講義ってのは、１５回の授業を３日くらいでどばーっとやっちゃうんだよね。
御手洗 え、ずっと授業ですか？
山梨 そう、ずっと授業。
佐久間 でも、良心のある先生なら、４時くらいには終わってくれるものなんだけどね。
御手洗 今日の先生には良心の欠片もなかったと。
佐久間 まあ、そういうことになるねぇ。
御手洗 あらら･･･
山梨 いや、そうじゃないよ！ 一概に･･･そうじゃないよ。
佐久間 まあまあ。
御手洗 佐久間さん、さっきから何読んでるんですか？
佐久間 え？
山梨 何々、「宇宙人のススメ」
佐久間 そう。
御手洗 へえ。佐久間さん、宇宙人、いる派ですか？
佐久間 うん。ホーキング博士によるとね、宇宙人がいない確率のほうが、ずっと低いんだって。あ、これは違う人の本だけど。
山梨 へぇ･･･私はいない派ですね。
御手洗 いや、山梨さん。これだけは言わせてください。宇宙人は実在するんですよ。
山梨 お、まさかアレを見たことがあるのかい？
御手洗 ･･･はい。
佐久間 あれって･･･
山梨 やだなぁ･･･あれですよ、あれ。
鈴木、現れる。
鈴木 いたいた。さがしたよー･･･（音楽）
もーもいろーのーかたおもーいー♪～（中略）～お腹ぎゅるるん、桃色のファンタジぃいいい
だだだ、ばたん。
間。
佐久間 で、あれって？
御手洗 あれ、よかったんですか？ 鈴木さ･･･
山梨 大丈夫。鈴木さんのお腹が弱いのはちゃんと分かってるから。
御手洗 さすがです。
山梨 で、見たのね。ユー、見たのね。アレを。
御手洗 はい。たしかに、この目で。
山梨 ＵＦＯを。
佐久間 えー、ホントに？
御手洗 確かに見たんですよ！ アンフライングオブジェクトを！
間
山梨 え、違うよ。アンフライングじゃ、空飛べないよ！
佐久間 あれ、ホントだ。俺もアンだと思ってた。
山梨 ていうか、アンだったら、Ｕですらないですし。
御手洗 あ、ホントだー（笑）
＞佐久間 ホントだー（笑）
山梨 ですよー。
御手洗 ･･･じゃあ、ＵＦＯのＵってなんなんですか？
山梨 そりゃあ、あれでしょ。
佐久間 あ、分かった。【宇宙】【フライング】【オブジェクト】だ！
御手洗 それは違うんじゃないですかー？
佐久間 あ、やっぱり？
山梨 ･･･惜しい！
ふたり え？
山梨 宇宙を、英語で言うと？
佐久間 スペース！･･･じゃないな。
山梨 もう少し、でっかい感じで･･･ひとつ、みたいな？
御手洗 ユニバース！
山梨 そうっ！
佐久間 なるほど。【ユニバース】【フライング】【オブジェクト】か。
御手洗 確かに宇宙空間飛んで地球来てますからね。
佐久間 まさしく。ずばりそのまんまだな。
山梨 分かりやすくていいですよね。
佐久間 あ、じゃあ、ＵＭＡはどうなるんだ？
山梨 ＵＭＡ（ユーマ）ってなんです？
佐久間 未確認生物だよ。雪男とか、フライングフィッシュとか。
山梨 そんなのがいるんですねぇ。
佐久間 いや、あくまで未確認だから、いるかもよ？ってはなしでしょ。
御手洗 はいっ！
佐久間 おっ･･･
御手洗 分かりました！
山梨 自信の程は？
御手洗 聞いてください･･･【ユニバーサル】【未知】【アニマル】ＵＭＡ！
山梨 え、ダメじゃん、【未知】って日本語じゃん！
御手洗 あーいかにも
佐久間 でも、【ユニバーサル】はいい発想だよね。
御手洗 ですよね！ こう･･･宇宙的な？
山梨 あー。宇宙人的な発想ですか。
御手洗 そうですそうです。
佐久間 そういえば、人間も宇宙から見たら、宇宙人なんだよね。
山梨 ですねー。蟻とかから見たら、私たち、白い巨塔ですよ。
御手洗 あ、でも私たち黄色人種だから黄色い巨塔じゃないですか？
山梨 いやいや。蟻の黒さに比べたら、人間なんてみんな白みたいなもんだよ。
佐久間 あー、ね。
がらり。（音楽）
鈴木 ふう･･･う･･･ぬぅ･･･むう。
がらり。ばたん。
佐久間 ･･･何の話だっけ？
御手洗 何でしたっけ？
山梨 御手洗さんが、宇宙人観たって話。
＞佐久間 ああ。
御手洗 あ、そうなんです。あれはよく晴れた日の、夕方くらいだったと思います･･･
＞山梨 ちょっと待って。
御手洗 あ、はい？
＞山梨 なんでそんなに語り口がホラーっぽいの！
御手洗 白雪さんほどじゃないです。
山梨 いない人と比べてどうするのよ。
佐久間 わっ！
山梨 うわあっ！
佐久間 おどろいた？
山梨 やめてくださいよ。今、怖いものセンサーはいっちゃってるんですから。
御手洗 怖いものセンサー･･･妖怪レーダーみたいなものですか？
佐久間 ピーン。
山梨 からかわないでください。
佐久間 だって面白いし。
＞山梨 御手洗、続き！
御手洗 あ、はいっ！
御手洗 ･･･それが、ちょうど時計の針が５時になって･･･みんなが帰りだした頃だったんです。私は、弟の投げたボールをこぼして、てん、てん、てん、と転がるボールを追いかけたのです。すると･･･ボールは半球上のドームの中に吸い込まれるように･･････消えていったんです。そして･･･
山梨 ･･･そして？
御手洗 そのドームの天井に空いた穴から･･･見えたんですよ。
山梨 いいいやぁあもごっ･･･
佐久間 落ち着けー･･･もーこわくないぞー。
御手洗 す、すみません。大丈夫ですか？
佐久間 ちょっと、想像力が豊か過ぎるんだよね。それで、見たんだ。ＵＦＯ。
御手洗 そうなんです。星の見え始めた空に、光がすぅーっと集まって、それで、横のほうにぱーっと動いて消えたんですよ。
山梨 ･･････そうなんだ。
佐久間 落ち着いたか？
山梨 ･･･はい。すみません。
鈴木 ･･････あれ？ みんな、げんき、ないじゃん。
一同 ･････
佐久間 お前に言われたくはないな。
鈴木 ･･････え？
山梨 ･･･ぷっ
鈴木 ･･え。
佐久間 ･･･くくっ･･･
＞御手洗 ははっ（笑
一同しばし（笑）
鈴木 ･･･え、なに、てんかいが、よめないんだけど？
佐久間 んー、ぐっじょぶ！
鈴木 え、そうか。それはよかった。
＠暗転
到着している。
外。準備している。
鈴木 いやあ、何が悪かったのか･･･
佐久間 賞味期限切れてるの食べたんじゃないの？
鈴木 んー･･･
山梨 私も、冬だったら、卵３日くらいならよゆーですけど、夏は流石にやりませんよ。
御手洗 え！？ それって大丈夫なんですか？？
山梨 だって御手洗ちゃん。賞『味』期限だよ。
御手洗 まー、そうですけど。
山梨 未来のお嫁さん修行よ！
鈴木 余らせないように買うのが大切だと思ったよ。
山梨 ですよねー。
御手洗 前言撤回！？
佐久間 で、何食ったの？
鈴木 んー･･･あえて言うなら、
佐久間 ほう。
鈴木 スズキを喰ったことかな。
山梨 共食いっ！？
鈴木 いやいや。魚の、スズキ。
佐久間 なんというご都合主義的な展開。
御手洗 事実は小説よりも奇なり、ってことですかね。
佐久間 刺身で食ったの？
鈴木 いや。塩焼きにしたんだけど、ちょっと生っぽかったんだよね、中のほうとか。
山梨 あー、それはやばいですよ。
鈴木 やっぱり？
御手洗 でも、あれですね。･･････
佐久間 ･･････
鈴木 ･････････
山梨 ････････････
羽音♪
御手洗 虫除けスプレー忘れたの致命的じゃないですかー！！
鈴木 あーっ！ もう、言うなよ～
佐久間 余計にかゆい！ かゆい！ 痛がゆい！ もうこうなったら戦争だ。
御手洗 え？
鈴木 そうだな。
間。
鈴木 モスキート発見！
佐久間 どこだっ！
鈴木 そっち行ったぞ！
佐久間 どこだどこだっ！
御手洗 かゆい～
山梨 口に出すと余計にかゆくなるんだって！ ああっ、ストッキングの上から刺されてる！ もうー！！
御手洗 あ、ここも！
山梨 ダメよ！ 御手洗ちゃん、ダメ、絶対。掻いたら後が残るわよ！
御手洗 そ、そんな･･･
山梨 耐え、忍ぶのよ。
御手洗 は、はいっ･･････
鈴木 いたかー！！
佐久間 いないぞー！！
鈴木 よく探せー！！
御手洗 先輩、もう、ダメです！
山梨 そんなときのための、寝袋ガードよ！
山梨、寝袋に飛び込み、顔だけ出す。
御手洗 おおっ！
羽音。しばらく飛び回って、山梨の頬に止まる。
御手洗 ･･･あ。せ、先輩･･･ほっぺたにやぶ蚊が･･･
山梨 ･･･おちついて、よく聞いて。･･････叩くの。
御手洗 えっ･･･でも、そんなっ！
山梨 ここは戦場･･･多少の犠牲はつきものだわ
御手洗 で、でもっ･･･
鈴木 敵影、多数っ！ 捕捉しきれません！
佐久間 なんとしても、我々は生きて帰るんだぁあああ！
山梨 血を吸うためのかゆみ分泌成分が注入されるその前に叩くのよ！ さあ！ 早く！
鈴木 はぁあああああああああ
佐久間 こほぉおおおおおおおお
鈴木、佐久間のターン。
ぱんぱぱぱん！
ぱぱぱんぱん！
ぱぱんぱんぱん！
ぱん、ぱぱぱ！
御手洗のターン。
ぱん！
山梨 ぶべぼ！
御手洗 だ、大丈夫ですかっ！
山梨 よく、やったわ･･･ガク。
御手洗 やまなしせんぱーい！
鈴木 敬礼っ！
佐久間 ･･････
白雪 うわぁ･･････綺麗に見えますね。
芹沢 夏はやっぱり天の川が綺麗だよね。
白雪 これ、全部星ですか。
芹沢 そりゃそうだ。
白雪 いつもより多い気がします。
芹沢 周りが暗いと暗い星も見えるからね。目が慣れればもっと暗い星も見えるようになるよ。
白雪 そうなんですか。
芹沢 うん。
惨劇現場に到着。
白雪 ･････････
芹沢 ･･･なにをやっているのだ。
我に返る一同。
佐久間 芹沢･･･
山梨 ･････････
御手洗 先輩･･････
芹沢 ･･････なんだ。
鈴木 ･･･虫除けスプレー持ってない？
芹沢 ん？ なんだ、切らしたのか？ 仕方ないな･･･（といって、がさごそ･･･）ほら･･･
一同 ははぁあああー
芹沢 ん、どうした？ なんだ？ ･･･おもてをあげい。
一同 はっ！
白雪 なんか、印籠みたいな効果発揮してますね。
間。
鈴木 あ、ダメだ。俺、トイレ。
佐久間 いってらっしゃい。
山梨 先輩、スプレー貸してください！
芹沢 ん、どうぞ。
山梨 えいっ！ 御手洗ちゃんも。
御手洗 あ、はいっ！ ありがとうございます。
芹沢 鈴木はどうしたんだ？
佐久間 ああ、あいつ、腹下し中。
芹沢 大丈夫なのか？
佐久間 薬は飲んだけど。
芹沢 屋外だからね。
佐久間 あー
御手洗 白雪ちゃん、今日来る予定だったっけ？
白雪 新歓が早く終わったんですよ。それで終電に間に合うかなって。
御手洗 おぉー、チャレンジャー。
佐久間 チャレンジャー。
芹沢 いや、調べたし。
山梨 インターネットですか？
佐久間 そういえばこの辺は圏外かな･･･？
御手洗 どうでしょう？
芹沢 あ、見ないほうがいいぞ。
御手洗 え？
芹沢 携帯の光、明るいから。
御手洗 そうなんですか。
佐久間 たしかに。
白雪 あの･･････
白雪 星、見ません？
芹沢 ･･････そうだな。
佐久間 俺、撮影するよ。
御手洗 先輩、見所とか詳しく教えてください！
山梨 ん、いいよ。
白雪 御手洗さん、それなんです？
御手洗 これ？ へへー。
山梨 ガイドブックかぁ。いいじゃん。
御手洗 んー、予習してきたんですけど、なかなかこうしてみると分からないですねぇ･･･
山梨 ん、目印になる星があるからね。まずはそれを見つけようか。それではここで問題です！
佐久間 お、いい趣向だね。
山梨 目印になる星はなんでしょう！
御手洗 ええと、ええと
白雪 あ、これじゃないですか？
山梨 はい、白雪さん。
白雪 夏の大三角ですね！
山梨 はい、正解。
白雪 うーん、どれでしょう？ 星が多すぎて難しいですね。
芹沢 まずは天頂の北極星は分かる？
白雪 ええと、あれですか？
御手洗 え、どれどれ？
白雪 あれですよ。
山梨 指の長さ、足りてないよっ
佐久間 そりゃあ、そうだ。あ、みんな、１分くらいカメラの前、立たないでね。シャッター開きっぱなしにしてあるから。
芹沢 了解。
御手洗 あ、見つけたかもです。
芹沢 うん。それじゃあ、その近く、天の川の川辺に明るい星がない？
白雪 あ、
御手洗 あ、分かります。あれがベガですか。･･･となると･･･ああっ、見えました、夏の大三角！
白雪 うそっ！ どこですか？
御手洗 え、目の前にあるじゃん！
山梨 まあ、目の前にあるかはあれだけど、綺麗だよね。
白雪 御手洗さんだけ見えてずるいです。
御手洗 え、もう大三角にしか見えないもん。
芹沢 んー。どうしたらいい？
山梨 えーと･･･ちっちゃい頃から見てたので、忘れましたねぇ。
佐久間 御手洗さん、なにしてんの？
御手洗 ･･･テレパシーを送ってるんです。
白雪 うーん･･･
佐久間 宇宙人じゃないんだから。
御手洗 やっぱ、宇宙人だったらテレパシー使えるんですかね！
白雪 ･･････あ、見えました。
佐久間 お。
白雪 あー、おっきいですねぇ･･･。
御手洗 おめでと。
白雪 ありがとう。
御手洗 テレパシー？？
白雪 ちがう、と思う。
結構長い間。
佐久間 あ、やばい吸い込まれそう。
御手洗 あ、分かります。
間。
白雪 静かですね。宇宙船地球号って番組、ありましたよね。
御手洗 ＮＨＫだ。
白雪 はい。
山梨 あー、わかるかも。なんか、直に接してる感じだよね、宇宙に。
芹沢 どこまでが宇宙なんだろうな？
佐久間 さあ･･･そういうのは芹沢のほうが詳しいだろ？
芹沢 さあね。
芹沢 あ、流れ星。
山梨 ･･････
御手洗 え、どこです？
山梨 だめですよ先輩。「あ、流れ星」っていった人は負け組みです。
芹沢 え？
山梨 願い事しなくちゃ！
芹沢 んーまあ。
佐久間 でも、世界中の人が願い事したら、流れ星はその重さで墜落しちゃうんじゃないか？
間。
白雪 ･･･え。
山梨 佐久間先輩にそんなメルヘンがあったなんて。
佐久間 ごめん、今のなし。
御手洗 え、いいじゃないですかメルヘン。
佐久間 芹沢は願い事しといたほうが良かったな。
芹沢 ええ？
佐久間 ほら、院試。
山梨 ああ、試験、受けたんですよね！
芹沢 先週ね。
佐久間 どうなの？
芹沢 んー、まあ。できることはやった、かな。
佐久間 そうか。大学院はここ、残らないんだろ？
芹沢 ああ。京都行きたいと思ってる。
白雪 ･･･そうなんですか。
芹沢 うん･･････そうなんだ。
御手洗 あ、また流れた。
佐久間 ･･･なあ、誰か忘れてる気がするんだけど。
白雪 夏は夜･･････ですね。
＠暗転
【夏２】
＠明転
ちゅんちゅん。
宿泊施設に帰ってきている。寝ている。
まさに死屍累々。
鈴木が入ってくる。みんなの中に、座る。
鈴木 ････････････････････････････････････俺の仲間。天文サークルの。うん。え、そうだよ。･･･どうかな。でも、今は楽しいし、良かったと思ってるよ。
山梨 ･･････あえ、鈴木はん？
鈴木 あ、山梨ちゃん。
山梨 帰ってたんです？
鈴木 うん。ごめん、起こしちゃった？
山梨 いえ、大丈夫です。ふぁあああ。
鈴木 まだ寝てるといいよ。
山梨 はい･･････ところでさっき、誰かと話してませんでした？
鈴木 ううん。
山梨 そうですか。
鈴木 うん、おやすみ。
山梨 おやすみなさい。
鈴木 うん。･･････星を見ててね、みんな夜通し起きてたからね。そう。人間は、眠るんだよ。なんでって？
間。
鈴木 なんでだろうね。
間。
鈴木 ･･･････････････････････････････長生きするためじゃないかな。
間。
＠しばらく暗転後、明転。
鈴木、同じ姿勢。
間。
ＳＥ、携帯の目覚まし。
がさごそ･･･
芹沢 ･･･む。
御手洗 むー･･･
鈴木 ･････････
芹沢 ･･･くわぁっ！
山梨 ほわっつ！
御手洗 ･･･んー･･････（眠りの中へ）
芹沢 あ、ごめん。
山梨 ･･･何時ですか？？
鈴木 ９時だよ。
山梨 あー･･･鈴木さん、帰ってきてたのですね。
鈴木 ･･････うん。
芹沢 おお･･･芹沢、無事か。
鈴木 うん。なんとか。
芹沢 ･･･そうか。
鈴木 芹沢･･･ちょっと話したいことがあるんだけど。
芹沢 うん？
鈴木 俺、宇宙人と会ったんだけど。
芹沢 ････････････え。
鈴木 それで、今、俺の中にいるんだ。
芹沢 ええと、うまく状況がつかめないんだが、･･････つまりお前は鈴木の殻をかぶった宇宙人だと。
鈴木 ･･････バカ。ＳＦ映画の観すぎだ。俺は、俺だ。ただ、意識が入ってきたんだ。ぶわーっと。
芹沢 ぶわーっと･･･大丈夫なのか？
鈴木 ぴんぴんしてる。
芹沢 むー･･･俄かには信じられないが、みんなには･･･
ＳＥ、目覚まし２
白雪 あ、朝ですか？ おはようございまーす。あ、おきて～、あさですよ～･･･
御手洗 むー･･･
佐久間 ぬぅー･･･
白雪 学校遅刻しちゃいますよ～･･･
佐久間 ふぎゃっ！？
白雪 うわっ･･･あー･･･びっくりした。･･･あ、おはようございます。
山梨 おはよう･･････どうしたの？
白雪 ふぇ？ なんです？
山梨 あ、わかった。白雪ちゃん、兄弟いるでしょ？
白雪 えー、何で分かるんですかー？？
芹沢 山梨さん、名推理だね。
山梨 えへへ
佐久間 あー朝か･･･
御手洗 おはようございまーす。
芹沢 おはよう。
鈴木 ･･････みんな、星、綺麗だった？
御手洗 あ、鈴木さん･･･はーい、綺麗だったです。
白雪 楽しかったですよ。鈴木さん、どこ行ってらっしゃったんですか？
鈴木 ちょっとね。
佐久間 んー･･･良かったんじゃないかな。
鈴木 そうか。
鈴木 みんな･･････。帰ろっか！
芹沢 ･･････
白雪 そうですねー。
山梨 とおまわりーしてかーえろー
鈴木 芹沢、ここ何時撤収だっけ？
芹沢 え、あ、ええと、１１時だったかな？
鈴木 まあ、なんだかんだで、ギリギリかな。みんな準備、準備！
佐久間 おし！ 帰ろ。山梨さん、ガジェットリスト出せる？
山梨 あ、ポーチの中です。ちょっと待ってください。
佐久間 待つよー。
御手洗 あ、なんか手伝えます？
佐久間 あ、じゃあ、望遠鏡とか、脚たたんどいて。
御手洗 はーい。
白雪 あ、旅館のタオルぬらしてきました。汗とか、拭いてください。
佐久間 お、ありがとう！
山梨 ありがとー。
鈴木 ･･････
芹沢 ･･･鈴木。
鈴木 何？
芹沢 さっきのホントか？
鈴木 んー･･･
芹沢 ホントだろ？
鈴木 何でそう思う？
芹沢 ･･･勘、かな
鈴木 んー･･･。お腹へったよね！
山梨 あ、私もお腹減りましたー。
佐久間 俺もー。鈴木、手空いてたら、下行って、朝食どうなってるか聞いてみて。
御手洗 え、朝食付きなんですか！？
芹沢 ９時までだったから、微妙かもな。一応、行ってみるといいかも。まだ片づけしてて、残ってるかもだし。
鈴木 了解。芹沢は鋭いな。俺ちょっと行ってくるよ。
芹沢 ･･･行ってらっしゃい。
＠暗転
【秋】
＠明転
部室。
閑散としている。
鈴木がひとり、座っている。
タイマー･･･ぴぴぴぴぴ･･･ぴ。
鈴木 ･･････いただきます。
赤いきつね。
鈴木 ･･･うまいな。
山梨 おはよーございまーっす！
鈴木 おはよう。
山梨 あ、おはようございます。起きてるんですね
鈴木 え、なんで？
山梨 いや、まあ？
鈴木 ･･･なんか聞かれた？
山梨 いえ、別に･･･。
間。
山梨 あ、私、いいもの見つけたんですよ！
鈴木 なになに？
山梨 じゃーん。星の缶詰。
鈴木 星の缶詰？
山梨 そうです。
鈴木 なにそれ？？
山梨 お菓子ですよ。こんぺい糖です。
鈴木 あー･･･なるほど。
山梨 なんですかその微妙な反応。
佐久間 お疲れーっす。お、何やってんの？
山梨 あ、佐久間さん。見てください。星の缶詰です！
佐久間 星の缶詰？ なにそれ、なにそれ？ あ、こんぺい糖。あー、ね。
鈴木 やっぱその反応だろ？
山梨 えー･･･なんでその反応なんですか！？
佐久間 何でって言われても･･･なぁ。
鈴木 え･･･なんか聞かれた？
佐久間 いや、どうだろ。
御手洗 おはようございまーす！！
山梨 おはよー･･･。
佐久間 おはよう。
鈴木 おはよう。
妙な間。
御手洗 あ、それなんですか？
山梨 よくぞ聞いてくれました。これはですねー･･･星の缶詰です！
御手洗 星の缶詰！？ え、なんですか、それ。
山梨 こんぺい糖です！
御手洗 あ･･･えーと･･･そうなんですか！
山梨 そう！
御手洗 た、確かにそうですよね！ こんぺい糖って星の形ですもんね！
ふたり ･･････ああっ！
山梨 ･････････え？
佐久間 いや、分かってたよ。分かってた。
鈴木 うん、わかってたって。分かってた。
御手洗 分かってなかったんですね。
佐久間 ･･････はい。
間。
御手洗 これ、缶切ほしいんですね。
山梨 そうなんだよね。どっかにないかな？
御手洗 ええと･･････あ、ありましたよ。
山梨 どれどれ･･････
キコキコとあける。
佐久間 そういえば最近芹沢見ないな。
鈴木 ･･････
山梨 研究のほうが忙しいんじゃないですか？
佐久間 あー･･･
山梨 だって、あと５ヶ月ぐらいで卒業でしょう？
佐久間 そうだよなぁ･･･あ、希望調書来てたっけ･･･？
鈴木 そうだっけ？
山梨 先輩、大丈夫なんですか？？ なんか一番よく見るんですけど！ 一緒に授業受けるなんていやですよ。
鈴木 え？
山梨 あ、いや、ホントはそんなに嫌じゃないかなって･･･
佐久間 学部違うから一緒の授業にはならないだろ？
御手洗 そういう問題じゃなくないですか？
鈴木 ああ、俺？ 俺はまあ･･･大丈夫だよ。
佐久間 いや、大丈夫じゃないだろ。
御手洗 あ、でも･･･芹沢先輩の場合はあれじゃないですか？
鈴・佐 あれ？
山梨 ･････････あ、開いた。
御手洗 これですよ、これ。
御手洗 あ、結構綺麗ですね。
山梨 だって星の缶詰だよ！
御手洗 緑色のはちょっともやっとボールに似てますね。あ、おいしい。
佐久間 ･･･カクニンな！
鈴木 おう。
佐久間 これは？（親指びしっ）
鈴木 ＧＪ！
佐久間 これは？（人差し指びしっ）
鈴木 アイアムナンバーワン！
山梨 トモダチマークですよね。
御手洗 とーもーだーちー
山梨 ともだーちー
佐久間 つぎ、これな。（中指びしっ）
鈴木 ＥＴ
佐久間 これは？（薬指びし･･･？）あれ、うまくいかない。
鈴木 ええ？ あれ、ホントだ。･･･まあ、いいじゃん。
佐久間 え、欠番？
鈴木 ･･･で、
佐久間 この次の指が立つということは･･･？
鈴木 立つということは･･･？
山梨 おふたりとも知らなかったんですか？
佐久間 え、お相手は？
御手洗 ホントに心当たりないんですか？
鈴木 ･･････そういえば、最近白雪ちゃんの様子ちょっと変だよね。
鈴・佐 ･･････え！？
鈴木 え、どういうこと？
佐久間 そういうこと？
御手洗 そういうことですよ。なんか夏ちょっと前から付き合ってたみたいですよ？
鈴木 言われてみれば、あのふたりちょっと仲良かったよな。
山梨 だって、この前の合宿だってずっと一緒にいたじゃないですか。
鈴木 マジで！？
佐久間 あ。
御手洗 え、なんです？
佐久間 写真がある。
御手洗 この前の？
佐久間 うん。
御手洗 みたいですっ！
佐久間 ＯＫ！ ちょっと待ってね。うわっ･･･ごめ･･･
佐久間、星の缶詰を引っ掛けて倒す。
山梨 あー･･･こんぺい糖が。
佐久間 ごめん。
鈴木 大丈夫だよ。春に掃除したし。
御手洗 ･･････あ、でも･･･これってちょっと面白くありません？ これがカシオペヤ座。こう、Ｗになってますよね。
山梨 じゃあ、ここがケフェウス座。カシオペヤ座が王様で、ケフェウス座が王妃さま。
御手洗 じゃあ、その上辺りが北極星ですね。
山梨 じゃあ、ずっと辿った辺りがペガススの大四辺形ですね。
御手洗 この辺ドラマティックですよねー。
山梨 北極星からペガススの大四辺形を通った延長線上の南の空にフォーアルハイトがあるよね。何色だっけ？
御手洗 ええと･･･。あ、鈴木先輩すごいですね！
鈴木 え？
山梨 ホントだ。小さい星の場所覚えてるんですか？
鈴木 え、まあ･･･結構思い出深い星もあるし。
山梨 ･･･え。
佐久間 写真！
御手洗 あ、見せてください！
山梨 あ、綺麗に撮れてますね！
佐久間 まあ、こんなもんかな。
御手洗 あ、見たら回しますね。
御手洗 あ、これですね！ あ、手、繋いでますね。
佐久間 まじでっ！
鈴木 どれどれ？？
佐久間 ホントだ･･････。俺、これ保存しとくわ。
鈴木 え？
佐久間 将来結婚式のときにスライドにして流すわ。
山梨 ちょ･･･ちょっと早くないですか。
佐久間 分からないよ。学生結婚だってないわけじゃないわけだし？
鈴木 ･･･うわー･･･なんか、ショックだわ･･･
山梨 何故に！？
一方その頃。
白雪 ･･･はい。私ダメなんですよ、ぬいぐるみ。すみません。
芹沢 へぇー。意外だ、
白雪 だって怖くないですか？ こう･･･見られてる感じがしません？
芹沢 だったら、目、取っちゃうとか。
白雪 いや、ますますに怖いです。
芹沢 ますますに？
開いた扉の向こうには、謎のポーズの集団。
白雪 こんにちはー。･･････あれ？
芹沢 おつかれーっす。･･･ん？
白雪 みなさん･･････なにやってるんですか？
佐久間 え？
山梨 なんでもないですよ。
佐久間 どうしてここに？
芹沢 どうしてって･･････昼休みだしな。
白雪 そうですね。･･････あ、それ写真ですか？
御手洗 え、あ、うん。見る？
佐久間 待った！ 順番だから。
御手洗 あ、はい。
山梨 おふたりとも最後尾に並んでください。
芹沢 あ、俺、あんまり時間内から後でいいや。
鈴木 じゃあ白雪ちゃんは、俺の後ね。
白雪 はーい。
間。
山梨 鈴木さんが全然写ってない。
鈴木 え？
御手洗 そりゃあそうですよ。だって、お腹壊して、
佐久間 もう、半分くらいトイレの住人なりかけだったよな。
鈴木 ああ、まあね。
芹沢 ･････････こんぺい糖か？ もらっていい？
山梨 あ、どうぞ。
白雪 ･･････先輩、本当は何かあったんじゃないですか？
間。
白雪 あ、すみません。今のは忘れてくださ･･･
佐久間 俺も聞きたいな。お前、最近なんか変だぞ。
鈴木 ･･････あ、わかる？ やっぱり付き合い長いと分かっちゃうんだな。
芹沢 鈴木。
鈴木 別にこのまま何もなかったことにしてもいいと思ってたんだけどさ。まあ、みんなに迷惑かけてるみたいだし、カミングアウトするよ。
芹沢 ･･････みんな、落ち着いて聞いてほしいと思う。
白雪 芹沢さん？
佐久間 芹沢は知ってたんだな。
芹沢 ああ。すまん。寝覚めが良くてな。
佐久間 ･･･で。
鈴木 うん。おれ、うちゅうじんにあったんだ。
間。
鈴木 で、今、俺の中にいる。
間。
山梨 はぁあああああっ！？
御手洗 え、ちょ･･･落ち着いてください！
山梨 ふざけてるんじゃないですよ、宇宙人！ え、こう、タコ足みたいなのがにゅるにゅるって鈴木小太郎の体内に侵入するわけですよね！ 耳とか、口とかから！ 悪霊退散！ 悪霊退散！
芹沢 いや、そういう系じゃないらしいからっ！
山梨 なんでそんなこと言えるんですかっ！？ 見たんですか？ もしかしたら今言ってることも全部宇宙人の台詞かもしれないんですよ！
芹沢 いや、目を見れば分かるから！
山梨 分からないですよ！
芹沢 ･･････そうか。
御手洗 というか、先輩は宇宙人が鈴木さんの中にいるのはもう前提的にＯＫなんですか？
山梨 え、だって、本人がそう言ってるじゃん。
鈴木 言ってます。
御手洗 え、私もＵＦＯの目撃経験者として言わせてもらいますと、宇宙人はいると思うんですよ、この広い宇宙のどこかに。
山梨 なるほどなるほど。
御手洗 でも、地球にはいないでしょ？ ましてや、鈴木さんの体の中にはいないでしょ！
佐久間 俺もそう思う。夢でもみたんじゃないか？
鈴木 まあ、普通はそうだよな。
白雪 証拠とか･･･ないんですか？
鈴木 証拠。んー･･･
間。
鈴木 じゃあ、呼ぶから。
一同 ･･････え？
鈴木 俺の中のピースと替わるからちょっと待って。
芹沢 ちょ、ちょい待った。
佐久間 ピースって、宇宙人の名前？
鈴木 そうだけど？
芹沢 そんな簡単に替われるのか？
鈴木 たぶん、出来ると思うよ。あれ以来しょっちゅう話してるし。出来るよな？･･････できるって。
芹沢 危険はないのか？
鈴木 ･･････たぶんないって。
山梨 白雪、一休さんって、絵のトラをどうやって踏ん縛ったっけ？
白雪 ふんじばる？
鈴木 替わるよ。
間。
鈴木 ･･････
佐久間 変わった？
芹沢 しっ･･･
鈴木 ･･････みなさんはじめまして。ピースです。
御手洗 え、
一同 （笑）
鈴木 ･････････
佐久間 声くらい変わると思った！
御手洗 先輩、それはないと思います！
白雪 ･･･（笑）
鈴木 ･･････でしょうね。
芹沢 本当に宇宙人･･･ピースさん？ ですか？
鈴木 ええ。芹沢達昭さん。私のことはどうぞ呼び捨てで、ピースと、呼んでください。
芹沢 じゃあ･･･ピース。･･･どうして俺の名前を？
鈴木 彼のデータベースを閲覧させてもらいました。
芹沢 データベースとは、脳のことか。
鈴木 あなたたちの世界では一般的にそういうんですね。
芹沢 君たちの世界では一般的にデータベースというんだな。
鈴木 ･･････そうです。確かにその通りです。
鈴木 ･･････何か？（固まっている一団に目をやる）
山梨 ･･････（あわあわ）
御手洗 ･･･マジですか？
鈴木 （にっこりわらって）ええ。本当ですよ。
＠暗転
一同 ええーっ！！？
なんかＳＥ。
【秋２】
溶明
アホー、アホー、アホー
かーらーすー何故鳴くのーカラスの勝手でしょー♪
芹沢 ･･･で。
佐久間 芹沢、大丈夫か？
芹沢 今日、何も頭に入ってこなかった･･･。
佐久間 うん。そんな顔してる。
山梨 買ってきました！
御手洗 うわっ･･･すごいですね。
山梨 計、７８００円。
御手洗 チョコレーェトは、森永♪
白雪 明治じゃないですか？
鈴木 ありがとうございます。どうもこの意識を維持するにはたくさんのエネルギーを消費するようですね。
御手洗 みたいですね。
鈴木 あ、みなさんもどうぞ。
白雪 あ、いただきます。
鈴木 どうぞ。地球の食べ物はおいしいですね。
佐久間 そうかな？
鈴木 仲間とともに食べられるからでしょうか？
芹沢 今は鈴木も意識あるのか？
鈴木 え、ああ。･･･ありますよ。今は、私の宇宙船でポテチ食べてます。
山梨 うわっ･･･不健康。
芹沢 そろそろ続き、いいか？
鈴木 ええ、かまいません。ええと、どこまで話したでしょうか？
芹沢 ええと、ファイリーなんとか星が危機に陥って･･･
鈴木 ああ。そうでした。
御手洗 ファイリーって･･･？
白雪 失礼ですよっ･･･！
鈴木 ファイリーフローライト星です。価値観は違いますが、我々にとってよい星でした。
芹沢 しかし危機が訪れたと･･･。
鈴木 はい。星を構成する元素が宇宙空間に流出していく現象が起こったのです。
芹沢 元素の流出。なんか聞いたことあるな。
白雪 アニメですね。ＮＨＫのエレメントハンターですね。
鈴木 そんなアニメがあるんですね。
佐久間 何で知ってんの？
白雪 あれ見て、周期律表覚えましたから。
鈴木 宇宙はひろいですから。
山梨 どうして元素は流出してしまったんでしょうか？
鈴木 ･････････どうしてでしょうか。実はよく分かっていないんですが、そのことに関しては母星に残った仲間達が突き止めてくれているはずです。
佐久間 アニメではどうなったの？
白雪 ええと･･･すみません。忘れちゃいました。
鈴木 私たち捜索隊は、その流出元素の全タイプのサンプルを求めて全宇宙に散らばることになったのです。
山梨 ･･････大変ですね。
鈴木 ええ･･････大変です。そしてその原子のひとつが偶然彼の体内に取り込まれたのです。
佐久間 ほう！
山梨 だったら、それを取ってさっさと母星に帰ればいいじゃないですか。
鈴木 ･･･（微笑んで）そうはいきません。
山梨 どうして。
鈴木 我々は食物を育て、食事を取り、体を作り、社会を作って生きてきたつもりでいました。しかし、それはある意味間違った認識だったのです。
芹沢 もう少し具体的に頼む。
鈴木 生物の細胞の分子がどれくらいの周期で入れ替わっているか知っていますか？
視線が山梨にあつまる。
山梨 何です？
佐久間 専門だろ？
山梨 え、一応そうですけど、まだ２年生ですし･･･。･･･たぶんですけど、長くても一年くらいじゃないですか？
鈴木 そうですね。早いものだと数時間で入れ替わってしまうものもあります。
御手洗 へぇ。
鈴木 我々はこの世界の大きな循環の中で、ただ媒体のひとつとしてあるに過ぎないんですよ。でも。
鈴木、食べる。
鈴木 その元素、原子ひとつが何か素晴らしい働きをするかもしれないでしょう。火を操ることを考えたり、土をこねて器を作ったり、蒸気を使ってプロペラを動かしたりすることを思いついたりするかもしれない。
鈴木、飲む。
鈴木 或いは、神経伝達物質となって体中を駆け巡り、身に迫る重大な危機から肉体を救うかもしれない。･･････だから、勝手に持ち出すわけには行かないんです。
佐久間 じゃあ、どうするんだ？
鈴木 新陳代謝で体外に出るのを待ちます。本当は、地球圏外に出るまで待つのが正しいのでしょうが、（笑って）そこまでは流石に。
芹沢 だとしても、別にその流出元素？ は他にもたくさんあるだろう。わざわざここに取りに来なくても･･･
鈴木 失礼ですが、人類はまだ何も知らないようなものです。･･････これ以上をいうことはできませんが、そういうことです。
山梨 何も知らないことはないですよ。
鈴木 （にっこり笑って）そうですね。食べ物はとてもおいしい。
山梨 ＄％▼･･･
白雪 ど、どうしましたっ！？
御手洗 ･･･はっ･･･ここは？
白雪 あ、おはよう。
御手洗 おはよう･･･。
鈴木 あ、信じてもらえましたか？
御手洗 あ、ええと。すごい話ですけど･･････ていうか、すごすぎて意味不明でしたが、んー･･･
佐久間 お、まだ疑ってるの、すごいね。デカルトになれるよ。
芹沢 デカルトにはなれないよ。
佐久間 そうか？
鈴木 そうですか･･･困りましたね。
佐久間 なんかできないの？ 空飛んだりとか、サイコキネシスでなんか壊したりとか。ね？
御手洗 そうですよね。こう、テレパシーでびびびーっとか。
鈴木 あ、テレパシーなら出来ますよ。
佐久間 マジでっ。
鈴木 あ、じゃあ、行きますよ。
佐久間 え、ちょｔ･･･Ｔ！ Ｔ
鈴木 え？
御手洗 あ、これ、タイム。ちょっと待ってって意味です。
鈴木 ああ･･。
白雪 佐久間さん、･･････口を開けばしゃべれますよ。
佐久間 ああっ･･･ホントだ。うっかりしてた。
芹沢 えー･･･
佐久間 え、だって、びびびーってくるんだぞ
御手洗 ･･･わ、私にも来るんですよね。
鈴木 あ、ついでなので一斉送信しますよ（にっこり）
一同 ･･････え
白雪 Ｔ！ Ｔ！
鈴木 ああ、タイム。ちょっと待ってって意味ですね。
白雪 （こくこく）
佐久間 白雪さん？ ･･････口を開けばしゃべれますよ。
白雪 ああ！ ･･･知ってましたよ。
佐久間 そうですか。それは余計なことを失礼。
白雪 いえいえ。一応ありがとうございます。
山梨 ピース！ なにか心構え的なものが必要ですか？
鈴木 何のための心構えですか？
（御手洗、ストレッチ中）
山梨 決まってるじゃないですか！
（芹沢、懸垂中）
鈴木 はい。
（佐久間、瞑想中）
山梨 テレパシーを受け取る上での心構えですよ！
（白雪、御手洗と器械体操。Ｖ字のやつ）
鈴木 特にないですよ
一同 え、ないの？
鈴木 え、あったほうがいいですか？
佐久間 え、だって一応、初体験だし？
山梨 そうそう。
白雪 そうなんです。初心者なので。
芹沢 簡単モードで。
御手洗 よろしくです！
鈴木 そうですか。では、リラックスして、笑顔で
一同、頑張る。
鈴木 ･･････ウソです。
一同 えー･･･
鈴木（音） こ ん な 感 じ で ど う で し ょ う か ？
間。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ιллллл⊂二二л二二⊃⊂二二л二二⊃ ⊂二二л二二⊃⊂二二л二二⊃ ! !（＃）Θ（＃） （注 トンボです）
御手洗 い、いまのっ！？
佐久間 いやいやいやいや。
鈴木（音） そ う で す テ レ パ シ ー で す 。
佐久間 うっはぁ。
御手洗 え、あ、これ、すごい。
白雪 カタコト？
鈴木 そうでもないですよ。
芹沢 いや、我々人間からしてみれば、すごい能力だよ。
鈴木 あ、これ、別に人間でも出来ると思いますよ？
一同 ･･････へ？
アホー、アホー
鈴木 んー･･･秋は夕暮れ、ですね。
＠暗転
【冬】
音楽。
スクリーンショウ。
おでこをぐりぐりすり合わせる白雪と御手洗。佐久間と山梨。山梨、途中で佐久間を諦めて、鈴木に頭突きする。倒れる鈴木。芹沢はパソコンを持ち込んで、絶賛勉強中。
勉強している芹沢。白雪が入ってこようとして、芹沢をみつけて止まる。ゆっくりとはいって、隣に座る。部屋の外に集まる面々。
おでこに触覚をつけて、テレパシーの練習。専門書を読みながらやる芹沢のテレパシーに、みんなが苦しむ。
山梨、望遠鏡を覗く。かじかむ指にほうっと息を吐きかける。もうすぐクリスマス･･･なのは、この物語にはなんの関係もない。
芹沢、ひとり、勉強している。
芹沢 ･････････ふぅ･･･
白雪 お疲れ様です。
芹沢 あれ？ 今日は観測会じゃなかったっけ。もうちょっと書いたらそっち行くから･･･
白雪 先輩。
＠暗転
一同 はっぴばーすでーの歌。
＠明転
一同 おめでとー。
鈴木 誕生日、おめでとう。
佐久間 お、代表なんかいいこと言って！
鈴木 ちょ･･･無茶ぶり禁止！
山梨 無茶じゃないですよ！ 言える展開ですよ。
鈴木 そうじゃなくて！
芹沢 ･･･ありがとう
静かになる。
芹沢 もらおうかな。
御手洗 白雪、お皿！
白雪 はいっ！
御手洗 フォーク！
白雪 はいっ！
山梨 おおっ･･･一年生、チームワークいいね！
一年ズ ふふふのふー。
山梨 なにそれ？笑
佐久間 とりあえず、芹沢、食え。
鈴木 みんな待ってるから。
芹沢 え、ああ。いただきます。
もぐもぐ。
芹沢 あ、うまい。
白雪 ホントですか！？
山梨 はい、ここで発表です！
鈴木 じゃかじゃかじゃかじゃか･･･
＞佐久間 じゃかじゃかじゃかじゃか･･･
芹沢 お、手が込んでる。
ふたり じゃかじゃかじゃん
山梨 ケーキは白雪さんの手作りでしたー
芹沢 え、マジで！
白雪 皆さんに手伝ってもらって作ったんです。
佐久間 あわ立て担当！
鈴木 イチゴ洗い担当！
御手洗 生地作り担当！
山梨 毒見担当！
一同 しゃきーん！
芹沢 あれぇ、最後･･･？
一同笑う。
鈴木 じゃ、乾杯しようか。
佐久間 お、いいねぇ。
御手洗 なっちゃんほしい人います？
山梨 あ、なっちゃんほしい。
白雪 お茶もありますよ。
鈴木 お茶頂戴。
芹沢 俺、なっちゃんほしい。
山梨 どうぞー。
御手洗 ああーっ！ 佐久間さんもう入れてる。
佐久間 いいじゃん、別に。
鈴木 よくない。ＫＹ！
芹沢 まあまあ。
鈴木 よし。じゃあ･･････えー。芹沢の卒論提出･･･はまだなんだよな。その前に乾杯ってどうなんだ？
芹沢 まあまあ。
山梨 こんなことしてて大丈夫なんですか？
芹沢 大丈夫。
御手洗 大学院は京都なんですよね。
芹沢 うん。
佐久間 じゃあ、あと２ヶ月ちょっとでお別れだ。
芹沢 ･･････そうだな。
鈴木 ･･･よし！ じゃあ、卒論提出と進学見込みに、かん、ぱーいっ！
一同 かんぱーい！
＠暗転
＠明転
二人を残して、わいのわいのと外へ出て行く。
鈴木 みんな、外行っちゃったな。
芹沢 今日は星が綺麗だから。
鈴木 で。･･････話って何？
芹沢 いや、まあ･･･
鈴木 あ、お呼びでないか。
芹沢 すまんな。ちょっとピースと話がしたい。
鈴木 ･･･俺じゃダメか？
芹沢 ･･････お前のことはいい仲間だと思ってるし、信頼もしているが、ピースに聞きたいことなんだ。俺たちよりずっと長く生きてるから。人生の先輩として、聞きたいことがあるんだ。
鈴木 ん。じゃあ、替わるよ。
間。
芹沢 ピース。
鈴木 ･･････なんですか？
芹沢 ピースの仲間ってどんなやつだ？
鈴木 私の仲間は、気のいいやつらですよ。
芹沢 そうか。
鈴木 あなたの仲間によく似てます。
芹沢 俺の仲間？
鈴木 やっぱり楽しいですね。久しぶりにこんな気持ちになりました。
芹沢 なんなんだろうな、悩みひとつ相談できない仲間って。
鈴木 仲間とは概してそんなものじゃないでしょうか。
芹沢 ･････････
鈴木 仲間だからこそ、相談できないんじゃないでしょうか。
芹沢 ･･････そうか。
鈴木 でも、一緒にいたら楽しいし、余計な気を使わなくてもいい。
芹沢 ･･････そうだな。
鈴木 仲間でいるというのは、そういうことじゃないかと思います。
芹沢 難しいな。
鈴木 あくまで私の意見です。
芹沢 あー･･･灯台下暗しというか･･･
鈴木 仕方ないです。失って始めて気づくことが多いものです。その前にあなたは気付けたのですから。
芹沢 なんなんだろうな。なんでわざわざ早くいなくなっちゃうんだろうな、俺。
鈴木 やりたいことがあるからでしょう。
芹沢 そうだ。そうだが･･････
鈴木 今、楽しいですからね。
間。
芹沢 ピースはどうしてこの役を引き受けたんだ？
鈴木 この役というのは？
芹沢 元素探索の任務というのか･･･
鈴木 ああ･･････そうですね、どうしてだと思いますか。
芹沢 誰から見ても、正しい答えだからか。
鈴木 それは違うと思いませんか。･･････現に芹沢は、今、誰から見てもきっと正しいけれど、自分から見たら正しくない答えに悩んでいる。
芹沢 ･･････
鈴木 旅立つときは辛かったです。我々がもう一度会える保障はないわけですし、亜高速で生きる私と彼らの『時』は別離してしまいます。
芹沢 ウラシマ効果か。
鈴木 あなたがもし、ふたたびここを訪れることがあれば、味わうことになります。
芹沢 ウラシマ効果をか？
鈴木 ええ。同じ『時』を生きられないのですから。
芹沢 そうだな。俺がいなくても、俺のいないステラシアタは後にも先にもずっと続いていくんだ。･･････だからどう、といわれると困るのだが。
鈴木 それでも･･･
佐久間、入ってくる。
佐久間 それでも、俺たちは一度も飛び級していくお前をとがめようとは思わなかった。
山梨 ちょ、佐久間先輩！？
御手洗 せっかく隠れてたのに･･･
佐久間 自慢に思ったぐらいさ。
芹沢 ･･････どういうことだ？
佐久間 まあ、テレパシーは内緒話には向いてないってことだ。
芹沢 ･･･そうか。
鈴木 すみません。自分から見て、正しい答えを選びました。
佐久間 お前を止めなかったのは、どうでもいいと思ってたからじゃない。分かってると思ってたんだけどな。
鈴木 ･･････（ふっと笑って）･･･芹沢、そりゃあ寂しいけどさ。別に故郷の星に帰るわけでもないんだし、いつだって会えるさ。
白雪 そうですよ。そうです。
芹沢 ･･････ありがとう。分かってるつもりなんだけどな･･･なんか、な。ずまん、迷惑かけた。
鈴木 どんまい。
佐久間 ･･･どんまい！
山梨 どんまい！
御手洗 どんまい！
白雪 どんまい！
一同 どんまい！
芹沢 ･･････なんだそりゃ（笑）
一同、笑う。
空に流れる星も涙も今はなくても、今は生きていけるんだなぁ、ここが素敵な場所だから。今この瞬間、ここにいるために、頑張るんだと思う。（※ト書きです）
山梨 ･･･あ。星の缶詰食べます？？
芹沢 星の缶詰？
白雪 あれ、まだ残ってたんですか。
山梨 ５個セットだったのよぅ。
御手洗 あれ、先輩も前、いませんでしたっけ？
芹沢 ･･･ん、そうだったか？
鈴木 まったく記憶にございません。
芹沢 ええ？
佐久間 ･･･んー、似てない。
鈴木 そうか？
芹沢 で、星の缶詰って何？
鈴木 こんぺい糖だよ、ただの。
山梨 ただの、って･･･まあ、結果的にはそうですけどね、
御手洗 あ、缶切ほしいですよね。
芹沢 缶切？
鈴木 缶切？
山梨 前使ったの、その辺に転がってないかな？
佐久間 缶切。
白雪 あ･･･
鈴・佐 ああっ！
白雪 ええと？ ･･･ありました。
芹沢 ちょっと見せて。
白雪 あ、はい。
山梨 え、なんです？
芹沢 あ、ああ。これ･･････俺がずっと探してた缶切だ。
御手洗 大切なものなんですか？
芹沢 あ、うん。･･････それに、今年また俺をここに呼んでくれた幸運のアイテムになったわけだ。
佐久間 鈴木さん、今日の水瓶座のラッキーアイテムは？
鈴木 今日のラッキーアイテムは缶切。素敵な出会いがあるでしょう。
間。
芹沢 ･･･････････あ、すまん。使うんだったよな！
山梨 あ、はい。
キコキコ･･･
芹沢 これで本当に･･････
山梨 先輩･･･さよーならー
芹沢 待て。まだいるからな。出て行くまで追い出すなよ。
鈴木 にやにや。
佐久間 にやにや。
芹沢 なんだよ？
鈴木 あれだな。ツンデレだな。
芹沢 なんだそれ？ それよりみんな、こんなことしてていいのか？
佐久間 え？
芹沢 明日からテスト週間だぞ
一同、いい感じに固まる。
芹沢 こういうのなんていうんだっけ･･････。
固まっている。
芹沢 ああ。阿鼻叫喚だ（笑）
鈴木 ああ･･･おわた。すっかり忘れてた。
御手洗 先輩が元気ないって言うからですよ！
芹沢 まさかの俺のせい？
白雪 あれ？ こういうのってなんて言いましたっけ？
御手洗 みんなで夜なべとか闇なべとかして準備したんですからね！
芹沢 ああ、感謝してる。･･･闇なべ！？
鈴木 投げちゃえ！ くらえ、天の川シューティングアタック！
芹沢 食べ物投げるな！ 罰当たりな･･･
白雪 ああ！ 罰当たり。
山梨 八つ当たりじゃない？
白雪 ああ！ 八つ当たり。でも、七つしかあたってないですよ？
御手洗 すごい屁理屈！
山梨 じゃあ、ドラゴンボールの世界だね。
鈴木 何その談義っ！
芹沢 とりあえずみんな帰って勉強しろ！
間。
佐久間 芹沢･･････過ぎてしまったことは仕方ないのだよ。
芹沢 テストは明日からだ！
鈴木 まあまあ。
山梨 まあまあまあ。
白雪 私は･･････帰ります。
御手洗 あ、じゃあ私も。
山梨 悪あがきするのね。
白・御 はい。
山梨 まぶしいっ！ 鈴木さん、一年生が眩しいです！
鈴木 私たちはそれだけ暗い星も見えるようになったのだよ。
山梨 はっ･･･
芹沢 ふたりとも右に倣え！
ふたり びしっ！
佐久間 あ･･･俺？
芹沢 いや、･･･すまん、目算をミスった。
佐久間 しまらないなぁ。
鈴木 まあ、ちょうどいいだろ。
笑う。
芹沢 みんな、本当に解散にしよう。今日は楽しかった。ありがとう。
一同 うなずく。
白雪 あ、でも、最後にもう一回くらい観測会しませんか？
佐久間 そうだな。どうだろ？
鈴木 いいんじゃない？
芹沢 是非お願いしたいな。ちょっと引越しとかでバタバタしてるだろうけど。
鈴木 よし。じゃあ、決まりで。
間。
鈴木 よし、今日は解散！ お疲れ様でした！
一同 お疲れ様でした！
＠暗転
【エピローグ】
＠明転
御手洗 ふぁあああ･･･はむはむ。
山梨 御手洗ちゃん、女の子の端くれなんだから。
御手洗 眠気には勝てません。
山梨 眠れなかったの？
御手洗 いえ･･･明け方、早く目が覚めちゃって･･･
山梨 いいじゃない。冬はつとめてって、清少納言も言ってるよ。
御手洗 つとめてってどういう意味なんですか？
山梨 早朝。
鈴木 お土産、何がいいかな？ ピースは何がいいと思う？
山梨 え、ちょっと気が早くないですか？ これから観測ですよ？
御手洗 先輩、甘いですよ。今もうエピローグですからね。この展開だと観測後とかないですから。
山梨 あ、そうなの！？ というか、後のメンバーはどうしたんです？
鈴木 芹沢の引越しの手伝い･･････って送らなかったっけ？ 途中の乗換えで合流するから。
山梨 そうなんですか。
御手洗 あ、みんなでおそろいのストラップとかよくないですか？
鈴木 いいアイディア。
放送。まもなく３番線にのぞみ博多行きが到着します。この列車は途中、岡山、広島に止まります。自由席は･･･うにゃうにゃ。
鈴木 あ、これとかよくない？
山梨 ええっ、なんか目がキモくないですか？
鈴木 キモ･･･くはないよ。
御手洗 先輩、･･････
鈴木 いや、なんか印象に残るよ。こう、棄てられない感じが。
山梨 棄てたら呪われそうですもんね！
鈴木 そうじゃないけどさ。
御手洗 先輩。
鈴木 え、何？
御手洗 新幹線、あれじゃないですか？
山梨 ･･････走れっ！
鈴木 ストップ！
急ブレーキ。
鈴木 もう、間に合わないよ。
山梨 何でそんなにさわやかなんですか！
ぷるるるるるるー
きゅいーん。
鈴木 ･････････あ、電話だ。もしもし？
佐久間 鈴木、何号車？ ていうか、乗ったよな！？
鈴木 それがねー･･･。
佐久間 乗ってないのか！？
鈴木 ホーム間違えてたっぽい。
佐久間 なんという初歩的なミス！ 何でお前は外出すると毎度毎度なにかす･･･
鈴木 あ、ごめん、ちょっと待って。
佐久間 え？
鈴木 （くしゃみ）
鈴木（音） あ、ちょっと待ってください。
佐久間 待ってるぞ。って、あれ？
鈴木（音） 元素、回収しました！
芹沢（音） え、このタイミングで！
白雪（音） おめでとうございます。
鈴木（音） ええ。これで私の任務も終わりました。
鈴木（音） ええと、みなさん聞こえていますか？
佐久間 ばっちり。
鈴木 聞こえていますか？ こちらピースです。この半年、皆さんと出会えて本当に楽しかったです。
芹沢 こちらこそ。
御手洗 楽しかったですよ。
鈴木 ありがとうございます。私は皆さんのおかげさまですっかりホームシックです（笑）。
鈴木 少し前から後何度笑いあえるんだろう。何度同じ星が見えるのだろうって、数えてました。でも、すぐに人間の手じゃ足りなくなりました。
佐久間 悪かったな。１０本しかなくて。
芹沢 ･･････ピース。俺たちはまた会えるのか？
鈴木 星に願いを。その星のどれかが、私たちの星かもしれません。･･･もうすぐ春が来ます。星は巡り続けます。出会う日もあるかもしれません。
芹沢 ならば、季節の変わるたびに俺は思い出そう。空に思い出があるから。
鈴木 はい。それでは、お元気で。バイバイ。
御手洗 あ、行っちゃったんですかね。
鈴木 みたい。
山梨 唐突だなぁ･･･誰かに段々似てきてましたよね。
鈴木 えー、だれ？
山梨 さあ。
佐久間 おいっ、新幹線どうするんだよ！
山梨 あ。星の瓶詰め食べます？
鈴木 まだ残ってたんだ。
山梨 なんか、実は一部マニアにはたまらない一品らしいですよ。
鈴木 勝手にマニアの道に引き摺り込まないでくれるかな。
御手洗 でも、なんでそんなにたくさん買うんです？
山梨 あ、ちょっと･･･。
御手洗 え、抽選で１名様に天体望遠鏡？
鈴木 え？
佐久間 繋がらん。
芹沢 ･･･まあ、大丈夫だろ。ゆっくり待てばいいさ。
＠暗転
これにて閉幕。
※ トートロジー【tautology】
１ 同語反復。
２ 命題論理で、要素となる命題の真偽がいかなるものであっても、常に真となるような論理式。
☆作者あとがき
２月に、ヨーロッパ企画『曲がれスプーン』を観にいったり、魂闘で、武市さんの超能力のはなしに感銘を受けたりして、私は大きな転換を迫られているように感じました。それは、喫茶ショートストーリーズで見えた私のドラマの限界にもつながることであったし、取り組むべき課題でした。ただの会話がどれだけ創造的であるかを改めて感じました。あと、１１ヶ月で、学生ではなくなるかもしれません。今の人間関係の半分以上は消えてなくなるでしょう。そんな思いを書きました。さようなら。