ワンダーエッグ

作・なかまくら

2009.7.20

キャスト

フレディ・・・殺し屋。

アリス・・・・・女の子。

葉山・・・・・・・賞金稼ぎ。



【0】



男(フレディ) そう、聞いたことがあるかい? なにをって? おいおい、君もこの世界で生きてきたんだ。聞いたことぐらいあるだろう? ほら、ワンダーエッグの話さ。1000年もの間、茹で続けたハードボイルドなその卵は、なんでも、どえらい奇跡を起こすんだってよ。ああ、俺も一口でいいから食ってみたかったなぁ・・・ごほっ、ごほっごほっ。じゃあ。あとは、あんたらに託すぜ。



銃声。

暗転。



【1】



葉山    世界はそう、あの日幼かった僕の目の前で真っ黒に塗りつぶされて・・・色を失った。そして気がついた。世界には裏と表があること。それはまるでコインみたいで、表を見ている限り、絶対に裏には気付けない。(コイントスをする)・・・・・・裏だ。ん、何か?



銃声。



葉山    そして、俺はあの日、それに出会ったんだ。



フレディとアリス、椅子に座って何かを話している。

壁の向こうに葉山。手配書を持っている。



葉山    DEAD OR ALIVE・・・悪く思うなよ。それにしても、ちょろい仕事だな。おっさんと子どもが一人・・・ね。ふぅー・・・。



葉山、呼吸を整えて、銃を構え、扉から中に入る。

皆殺し編。開幕。



葉山    動くな!



その瞬間、銃声。葉山の手から、銃が落ちる。葉山、腕を押さえている。



フレディ  こんにちは。

葉山    ・・・はぁー・・・(両手を上にあげる)

フレディ  ほら、アリス。君も挨拶するんだよ。

アリス   こんにちは。

フレディ  はい。良く出来ました。

葉山    いったい何者だ

フレディ  そうですね。申しおくれました。私はフレディと申します。ほら、アリス、自己紹介して。

アリス   アリスだよ!

フレディ  うん。じゃあ、アリス、珈琲入れてくれないかな。客人をいつまでも立たせておくわけには行かないからね。

アリス   うん。ちょっと待っててね。



アリス、はける。



フレディ  さて、困りましたね。

葉山    殺せ。ここはそういう世界だろ?

フレディ  なるほど。つまり、あなたは殺し屋さんなわけですね。

葉山    殺し屋さん?・・・そうだな。

フレディ  奇遇ですね。実は私もです。

葉山    奇遇? そんなわけはない。フレディ=キヌガサ。あんたの首には賞金がかかってる。知らないわけないだろう?

フレディ  なるほど。賞金稼ぎですか。

葉山    ま、そういうことだ。俺は失敗したが、寝首をかかれないようにせいぜい気をつけな。

フレディ  ご忠告、どうも。

葉山    ・・・どういたしまして。

フレディ  じゃあ、そろそろ・・・

葉山    そうだな。手短に頼む。女の子が帰ってくる前に。

フレディ  では・・・

葉山    う、うわーっ!!



拳銃を撃つ。しかし、空砲。



フレディ  あら、運がいいですね。

葉山    ・・・・・・

フレディ  ところで大声なんか上げて・・・どうかなさいましたか?

葉山    ・・・なんでもない。早くやれ。

フレディ  そうですね。あなたの銃を借りることにしましょう。返すことは出来ませんが。

葉山    好きにしろ。

フレディ  では・・・今度こそ。

葉山    ・・・・・・くっ!

フレディ  ・・・・・・・・・・・・・・・

葉山    どうした!?

フレディ  あなた・・・お名前は?

葉山    名前?そんなもの・・・名乗るつもりはない。

フレディ  困りましたね。墓に刻む名もないなんて。

葉山    余計なお世話だ。

フレディ  ・・・・・・ふぅー

葉山    今度はなんだ。

フレディ  あなた・・・死ぬの、怖いんじゃないですか?

葉山    な、そ、そんなわけあるか!殺し屋が死を恐れていいわけが・・・

フレディ  私は怖い。

葉山    は?

フレディ  私は死が怖い。死ぬのが怖い。死ぬのを見るのも怖い。人間があっという間に、ただのモノになる。だから、それはとても怖いことです。神の道に悖っている。だから、あなたを殺しません。・・・今日は誰かを殺すと運気が下がる日なんです。

葉山    そんな勝手、許されると・・・

フレディ  勝手はあなたですよ。死ぬのは自由です。でも、あなたの死に私を巻き込まないでください。

葉山    いい、のか?



アリス、入ってくる。



アリス   ごめんね、フレディ。お湯の出し方わかんない。



フレディ  何がです?

葉山    俺は・・・あんたからもらった命であんたを殺すかもしれない。

フレディ  死ぬのは・・・怖かったですか?

葉山    ・・・悔しいが・・・こわかった。

フレディ  なら、人の気持ちが分かる人間になりなさい。それが出来るまではここにいるといい。その間、何をしても自由だ。私を殺したいなら、殺せばいい。ただ、それもまた、答えじゃない。

葉山    どういう・・・

フレディ  とりあえず、珈琲を淹れるから。そこにかけていてください。



アリス   おそーい

フレディ  ごめんなさいね。アリス、君も座っていてください。後は私がやっておきますから。

アリス   ポットのお湯が出ないの。

フレディ  うん、それは、安全装置をはずしてないからですよ。じゃあ、待っていてくださいね。

アリス   分かった。



アリス、座る。隣に、葉山も座る。



アリス   こんにちは。(大人びて)

葉山    ・・・お前・・・

アリス   私たちを殺しに来たのね。

葉山    そうだ。

アリス   どうして?

葉山    金のためだ。人は自分の正義と安全のためになら、いくらでも金を払う。

アリス   賞金首ってことね。

葉山    平たく言えば、そういうことだ。

アリス   楽しい?

葉山    え?

アリス   人殺し。

葉山    そういわれると・・・身も蓋もないな。

アリス   そう、よかった。

葉山    よかった・・・のか?

アリス   あなたは今日、ここで死んだの。

葉山    そう、なのかもな。俺は、助けられたんだな。

アリス   いいえ。

葉山    俺は、これから、頑張らなきゃいけなくなったんだ・・・きっと。

アリス   いいえ。

葉山    何がいいえなんだ!

アリス   あなたは、死んだの。

葉山    ああ、分かったよ。もういい。

アリス   そう、よかった。



フレディ  お待たせ。ミルクは入れる?

葉山    葉山だ。

フレディ  え?

葉山    名前。

フレディ  そうか、葉山くんというのか。いい名だ。私は、フレディ。

葉山    知ってる。

アリス   アリスだよ!

葉山    ・・・知ってる。



フレディ  (珈琲を一口飲んで)ふぅー・・・・・・温まるね。

アリス   にがーい。

フレディ  ふふふ・・・牛乳を取ってきましょうか?

アリス   ううん、頑張る。

フレディ  葉山くんは、どうです?

葉山    なんですか?

フレディ  牛乳。

葉山    結構。

フレディ  まだ育ち盛りでしょう?牛乳、飲んでおいたほうがいい。

葉山    もう、がきじゃないです。

フレディ  そうです?随分と若いんじゃありません?そうですね、・・・17歳、ですか?

葉山    ・・・!

フレディ  図星ですか。

アリス   図星!バキューン。

フレディ  その年で、どうしてまた、賞金稼ぎなんかに?

葉山    俺は、俺の、家族は、2年前にみんな殺された。俺は北のスラムに住んでいました。

フレディ  それはお気の毒に。

葉山    だから、俺は復讐することにした。



アリス   ふくしゅう?

葉山    酷い事をされたときに、同じ痛みを相手にも味あわせることだよ。

アリス   ふうん。面白いの?

フレディ  アリス、それは面白いとかつまらないとか、そういう問題じゃないんだよ。

葉山    そうだな。

フレディ  それで?敵は討ったのですか?

葉山    討ちました。

フレディ  でしたら、銃を置きなさい。あなたには、あなたなりの生き方があるはずです。

葉山    フレディ、さん?

フレディ  なんですか?

葉山    あなたはいままで何人殺しましたか?

フレディ  ざっと、星の数ほど。

葉山    だったら分かるでしょう。・・・一度殺してしまったら、後戻りは出来ない。他の生き方なんて、選べなくなってしまう。

フレディ  罪を償って、もう一度やり直すという方法だってあります。

葉山    あの世で・・・ですか?あなたは、それを選びますか?

フレディ  そうですね。今のは少し卑怯な質問でした。

葉山    ・・・あなたは、どうして、殺し屋に?

フレディ  私ですか。私もきっかけは似たようなものです。私の場合は、殺し屋に拾われまして。

葉山    え?

フレディ  唯一の家族だった兄を殺されて、絶望していた私を彼女は拾ってくれました。彼女は私に生き方を教えてくれるのと同じように銃の使い方もみっちり教えてくれました。その訓練は・・・もう、涙なしには語れません・・・

アリス   修行だ!

フレディ  だから・・・でしょうか。私は私が殺したある家族の一人娘を拾うことにしたのです。

アリス   ・・・・・・フレディ

フレディ  その子の名前はアリス。今、私の隣にいます。

葉山    ・・・・・・アリス。

アリス   何?

葉山    ・・・復讐したいって、思わないの?

アリス   復讐?誰に?

葉山    フレディに

アリス   ふ・・・

フレディ  復讐なんてつまらないものです。復讐は復讐しか生まない。

アリス   ・・・・・・・・・

フレディ  ですよね、アリス。

アリス   ・・・・・・

フレディ  アリス?



暗転。



アリス   ・・・わかんない



【2】



フレディ、大きな卵を抱えて入ってくる。



アリス   おかえり!

葉山    おかえりなさい。

フレディ  ただいま。

葉山    それは?

フレディ  今回の仕事で殺した、とある貴族が持っていたものです。ワンダーエッグとかいう代物だとか。

アリス   ワンダーエッグ!

葉山    なんともファンシーな名前ですね。

フレディ  そうだね。

アリス   世にも奇怪なワンダーエッグ

フレディ  アリス!!

アリス   ・・・・・・

葉山    え?

フレディ  いや、すみません。なんでもありません。・・・葉山くんはワンダーエッグ、ご存知ではないですか?

葉山    いえ。

フレディ  そうですか。ワンダーエッグ。・・・それは、1000年もの間、茹で続けられたハードボイルドな卵。

葉山    1000年・・・それは、御伽噺でしょう。

フレディ  一説によれば竜族の卵であるといわれるこの卵は、食べたものに奇跡を起こすといわれています。

葉山    ・・・・・・どうしてコレを?

フレディ  え?

葉山    フレディさんは今、奇跡が必要なのですか?

フレディ  いいえ。かなえて欲しくない夢があるんです。だから、これを持っていたい。誰の手も届かぬところに。

葉山    そうですか。

フレディ  葉山くんはかなえたいこと、ありますか?

葉山    俺は・・・よく分かりません。

フレディ  そうですか?ならば、耳を当てて御覧なさい。

葉山    え?

フレディ  あなたの望みを垣間見ることぐらい、できるかもしれません。



暗転。



【3】



アリス、立ち尽くす。

フレディ、返事がない。ただの屍のようだ。

葉山、入ってくる。



葉山    戻りました。・・・・・・え?

アリス   おかえり。



雷。雨。



アリス   おかえり。

葉山    ただいま。すごい雨だね。

アリス   そうだね。

葉山    雨戸を閉めた方がいい。

アリス   そうだね。

葉山    珈琲でも入れようか、身体が温まる。

アリス   そうだね。

葉山    あ、その・・・手当て、したほうがいいね。

アリス   そうだね。

葉山    いったい誰が・・・

アリス   ・・・・・・・・・

葉山    アリス、お前がやったのか!!

アリス   そうだね。

葉山    ど、どうして・・・こんな・・・?

アリス   復讐。

葉山    え?

アリス   復讐、したの。

葉山    嫌いだったの?

アリス   ううん。好きだった。

葉山    だったらなんで・・・

アリス   好きな人が嫌われるのがいやだった。

葉山    それは・・・そうなんだ。

アリス   うん。だから、もう、嫌われなくていいように。みんなの代わりに復讐したの。

葉山    それは、・・・誰が喜ぶの?

アリス   私!嬉しいよ。後は私が死んで・・・それで、復讐は終わるの。フレディが嫌った復讐の連鎖は終わるの。終わりなの。何もかも。だから、私っ!とても嬉しい!



銃声。

アリス、倒れる。



葉山    ・・・・・・・・・アリス。フレディ。そのままで、みんな楽しかったのに。アリス。違うよ。違う。復讐の糸はまだ途切れてない。まだ、俺が生きている。俺が生きていたら・・・・・・ダメじゃん。



銃声。

葉山、倒れる。

舞台に横たわる3つの物言わぬモノども。

ワンダーエッグが光っている。



暗転。



アリス   世にも奇怪なワンダーエッグ。

葉山    ・・・え?

アリス   世にも奇妙なワンダーエッグ。

フレディ  世にも奇妙なワンダーエッグ。

葉山    ちょっと、ふたりとも?

フレディ  世にも奇妙なワンダーエッグ。

フレ・アリ 世にも奇妙なワンダーエッグ。

3人    世にも奇妙なワンダーエッグ!









焼き直し編。開幕。



【0】



葉山    世界はそう、あの日幼かった僕の目の前で真っ黒に塗りつぶされて。色を失った。・・・そして気がついた。世界には裏と表があること。それはまるでコインみたいで、表を見ている限り、絶対に裏には気付けない。(コイントスをする)・・・・・・表か。ん、何か?



フレディとアリス、椅子に座って何かを話している。

壁の向こうに葉山。手配書を持っている。



葉山    DEAD OR ALIVE・・・悪く思うなよ。・・・おっさんと子どもが一人・・・ね。それにしても、どっかで見たような顔してんな。ふぅー・・・。



葉山    動くな!



葉山の手から、銃が落ちている。腕を押さえる葉山。



フレディ  こんにちは。

葉山    ・・・はぁー・・・(両手を上にあげる)

フレディ  ほら、アリス。君も挨拶するんだよ。

アリス   こんにちは。

フレディ  はい。良く出来ました。

葉山    あれ、なんだ・・・なんだ、これは

フレディ  申しおくれました。私はフレディと申します。ほら、アリス、自己紹介して。

アリス   アリスだよ!

葉山    やめろ!・・・やめてくれ。

フレディ  うん。じゃあ、アリス、珈琲入れてくれないかな。客人をいつまでも立たせておくわけには行かないからね。

アリス   うん。ちょっと待っててね。



アリス、はける。



フレディ  こんにちは。

葉山    こんにちは。フレディ、さん。それは、・・・ワンダーエッグ。

フレディ  おや、ご存知ですか?お目が高いですね。葉山くん。

葉山    俺は、一体・・・。

フレディ  とりあえず、お茶にしましょう。



アリス   フレディ・・・ポットのお湯の出し方が分からない。

フレディ  それは、安全装置をはずしてないからですよ。そろそろ覚えてくださいね。



アリス   じゃあ、後は任せた!

フレディ  任されました。



アリス   うん。



アリス、席に座る。



アリス   葉山、また来たのか。

葉山    またって・・・・・・。やっぱり、あれは夢。



アリス、発砲。足を撃つ。



葉山    いっ・・・痛い。夢のように痛い。

アリス   これも、夢じゃない。

葉山    でも、おかしい!俺はあの時確かに死んで・・・

アリス   世にも奇妙なワンダーエッグ。

葉山    え?

アリス   卵の周りは時間と空間が捻じ曲がって、時空間の屈折率が不安定なんだ。

葉山    ・・・そんなこと・・・信じられるわけが・・・。

アリス   私が死んで・・・復讐は、終わりになるの。

葉山    やめろ!

アリス   何度でも、繰り返される。何度でも。

葉山    どうにかならないのか?

アリス   私、あの人のこと、好きだよ。

葉山    どうにもならないのか?

アリス   ワンダーエッグはハッピーエンドを望んでいるわけじゃない。

葉山    え?

アリス   ワンダーエッグは、終わらないことを望んでいる。ワンダーエッグは、終わり続ける。

葉山    そんな・・・だって、そんなの、地獄じゃないか。

アリス   どうして?

葉山    え?

アリス   あなたがそれを言うのはまだ少し早いわ。

葉山    ・・・アリス、君はいったい・・・



フレディ  お待たせ。

アリス   おそーい!

フレディ  ごめんなさい。アリスはミルク、いる?

アリス   アリスはもう、大人なの。

フレディ  ごめんごめん。葉山くんは要るかな?

葉山    知ってるんじゃないですか?

フレディ  何を?

葉山    僕の答えを。

フレディ  まさか!私は人のココロが読めたりはしないよ。

葉山    ・・・いりません。

フレディ  そう。・・・葉山くんは、どうして賞金稼ぎに?

葉山    2年前に家族を殺されたのです。・・・!でも、復讐なんて考えていません!本当です。

フレディ  そうなんだ。

アリス   復讐って、何?

葉山    それは・・・

フレディ  酷い事をされたときに、同じ痛みを相手にも味あわせることだよ。

葉山    なぜあなたがそれを言う!

フレディ  え、台本に書いてあったからだよ。

葉山    台本?

フレディ  ああ、気にしないで。こっちの話ですから。

葉山    それをあなたが言ってはいけなかった。

フレディ  え?

葉山    分かったんです。

フレディ  何がです?

葉山    これはやり直しなんです。・・・そう、点数の低かった自分をやり直しているんです。だから、俺は、あなたたちに幸せになってほしい。

フレディ  そう・・・あなたは人の気持ちが分かるようですね。でしたら、もう、ここにいる必要はないでしょう。さあ、どこへでも行きなさい。

葉山    え?ちょっと、待ってください!

フレディ  ここはあなたのような人がいる場所ではない。

葉山    え?



暗転。



葉山    ・・・・・・え!?



【1】



雨。雷。



アリス、立ち尽くす。

葉山、返事がない。既にこと切れている。

フレディ、入ってくる。



フレディ  そろそろじゃないかと思ったんだ。

アリス   遅かったわね。

フレディ  私は・・・失敗したのか?

アリス   失敗?失敗なんてないわ。

フレディ  だが、現に私はこの子を救ってやることが出来なかった・・・。

アリス   また、やり直せばいいじゃない?

フレディ  何度かあったはずなんだ!何度か・・・確かにこの子を救ったはずだった!でも・・・この上、何を私にやり直せと言うんだ!

アリス   ワンダーエッグはハッピーエンドを望んでいるわけじゃない。

フレディ  ・・・え?

アリス   ワンダーエッグは終わり続ける。・・・・・・私?私は嬉しい!私が死んで・・・

フレディ  やめろ・・・

アリス   それで復讐は終わるの!

フレディ  やめてくれ!



アリス、自害。



フレディ  ・・・ああ。



フレディ、自害。





終章。



【0】



葉山    世界はそう、あの日幼かった僕の目の前で真っ黒に塗りつぶされて・・・色を失った。そして気がついた。世界には裏と表があること。しかし、その間を求め続ける人が、この世界にはきっといるのだと知った。





アリス、立ち尽くす。

フレディ、返事がない。既にこと切れている。

雨。雷。



葉山    ・・・終わり・・・なのか?

アリス   いいえ。

葉山    いいえ、なのか?まだ、俺には出来ることが残されているのか?

アリス   いいえ。これは、始まりなの。

葉山    ・・・どうしてだろう?

アリス   え?

葉山    分かったことがある。

アリス   分かったこと?

葉山    フレディは俺に復讐しようとしていた。

アリス   フレディは復讐することを嫌っていた。

葉山    そうかな?

アリス   フレディは、殺すことは怖いと言っていた!

葉山    そうだね。・・・でも、フレディは、人の気持ちが分かる反面、自分の気持ちが分からなかったんじゃないかな。

アリス   ・・・え?

葉山    人の気持ちを受け止めすぎて、自分の気持ちが分からなくなってしまっていたんだ。だから・・・

アリス   知ってた。



アリス、発砲。



葉山    え?・・・これで、終わるのか?

アリス   ・・・いいえ。変わるだけよ。出題者がね。



暗転。



【1】



葉山、ワンダーエッグを抱いている。



(3人が同時に)

葉山    ・・・世にも・・・奇妙な・・・ワンダー・・・エッグ・・・世にも・・・奇妙な・・・ワンダー・・・エッグ・・・世にも・・・奇妙な・・・ワンダー・・・エッグ・・・世にも・・・奇妙な・・・ワンダー・・・エッグ

アリス   (舞台袖から)・・・世にも・・・奇妙な・・・ワンダー・・・エッグ・・・世にも・・・奇妙な・・・ワンダー・・・エッグ・・・世にも・・・奇妙な・・・ワンダー・・・エッグ

フレディ  (舞台袖から)・・・世にも・・・奇妙な・・・ワンダー・・・エッグ・・・世にも・・・奇妙な・・・ワンダー・・・エッグ



3人    世にも奇妙なワンダーエッグ!



暗転。

これにて閉幕。